リアルな思い詰まっている 蜷川さんに聞く いわき「蜷川実花展」

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自身を「色味が強いイメージ」と認識する蜷川さん。作品展を「さまざまな角度から見てほしい」と話す

◆「心にプラスの種を植えられたらいい」 

 いわき市立美術館で開かれている「蜷川実花展―虚構と現実の間に」は20日で開幕から1週間を迎える。蜷川さんに本県開催の意義や作品への思いを聞いた。

―蜷川さんの魅力が詰まった展覧会になりました。

 「私の場合、色味が強いイメージが先行している。作家にとってカラーがはっきりしているということはプラスでもあり、マイナスにもなるもろ刃の剣。その色味の先は、なかなか見てもらえない。今回のような大きな展覧会ではさまざまな角度から見てもらえるのでうれしい。全体を見てもらうと、伝えたいことや考えていることがより伝わりやすい」

◆ 感情が浄化された

―いわき会場のコンセプトを教えてください。

 「毎回その会場でしか見られないものにしたい。いわきでは、桜が輝いて見える最初の部屋がとても印象的になった。この桜は東日本大震災直後に撮ったもので、撮影した時は被災地で見てもらえるとは思ってもみなかった。でも、すごく意味がある展示になった。少しでも福島の皆さんにプラスになったらいい」

―その後の「うつくしい日々」ではガラリと雰囲気が変わります。(世界的な演出家で)父の蜷川幸雄さんの顔が見えるカットは1枚もありませんが、その存在の大きさが浮かび上がります。

 「父の死が近いことを察してから、どこにでもある風景が美しく見えた。平常心を保つためにも撮るしかなかった。撮ることで自分の感情が整理されたり浄化されていくのが分かった。自分の目が父の目になった。父は今、目の前に見える世界と別れて、いずれ私たちとも別れていくと思った時、すごくまぶしく見えた」

―見せよう、ではなく自分のために撮った写真だという意図が伝わってきます。

 「『うつくしい日々』の写真も、発表するつもりはなかった。当時は自分のために撮っていた。桜と父の写真も、最後の桜(「PLANT A TREE」)も落ち込んでいる時に撮った作品で、いわきの展覧会はリアルな自分の思いが詰まっている写真が多い。今回はリアリティーが多い展示にしたかった」

―来館する人にどう楽しんでもらいたいですか。

 「美術展というより、日常の延長だと考えてほしい。『初めて行った写真展が蜷川さんでした』とか『写真集を初めて買いました』と言われ、誰かの初めてになれることがうれしい。美術館に足を運ぶきっかけになればいいな」

―話題を呼んだ映画「ヘルタースケルター」や新作「ダイナー」、ネットフリックスのドラマ「Followers」(2020年配信予定)など映像作家としても活動の幅を広げていますね。

 「映画と写真が活動の基本になる。写真は、そこに言語は介在しない。逆に、映画はすべてが言語化される。やりたいことをスタッフに伝えられなければ自分の作品にならない。写真を個人戦と例えれば、映画はチーム戦。写真では見えない答えが、映画やドラマでは見えてくる面白さがある」

◆伝えたかった強さ

―震災から8年が経過しましたが、震災と原発事故を経験した福島県にはまだ深刻な問題が残っています。

 「支援の仕方はさまざま。私は自分の得意なことに特化して、どこかで(被災地と)つながることができればと思い、桜を撮った。あの時は誰もが花見どころではなかったが、その年も桜はしっかり咲き、散ってもまた必ず咲くという強さを写真に残し、伝えたかった。心に『悪くないじゃん、人生』みたいなプラスの種を植えられたらいいと思う」

◆いわき市立美術館で5月26日まで 

「蜷川実花展―虚構と現実の間に」は5月26日まで。開場時間は午前9時30分~午後5時。  観覧料は一般1100円、高校・高専・大学生500円、小・中学生300円。22日、5月7、13、20日休館。