【裁判員制度10年】年々増える「辞退者」 選出想定しない企業も

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 市民が刑事裁判に参加する裁判員制度がスタートして21日で10年。市民感覚を司法に反映させることが大きな目的だが、裁判員を辞退する市民の割合(辞退率)は年々上昇を続ける。本県の昨年の辞退率は全国平均(67.0%)よりも高く、福島地裁本庁では70.2%、地裁郡山支部では71.1%と、いずれも7割を超えた。辞退率の改善などの課題が横たわり、専門家は10年が経過してもなお「未成熟な段階にある」と指摘する。

 「『重要な仕事がある』と言われてしまえば裁判所は何も言えない。辞退率の上昇は深刻だ」。福島大行政政策学類で刑事法が専門の新村繁文特任教授(69)は、企業の協力や努力がなければ会社員が「裁判に参加する」という選択ができないと指摘する。

 主な辞退理由の一つが、裁判所が例示する「事業上の重要な用務を自分で処理しないと著しい損害が生じる恐れがある」に該当すること。いわゆる「仕事を休めない」ことだった。

 裁判員は20歳以上の市民なら一部の例外を除き、誰でも選ばれる可能性がある。法律上、出頭義務が課されているが、70歳以上の人や学生、病気や妊娠、介護など正当な理由があれば辞退を申し立てることができ、認められる。

 福島地裁によると、本県の辞退率は、制度が始まった2009(平成21)年は福島地裁本庁が57.1%、地裁郡山支部は59.0%だったが、11年に福島地裁本庁が68.4%と一気に高くなり、その後も上昇傾向にある。

 社員が裁判員候補者名簿に登録された際の企業の対応はまちまちだ。郡山市のある大手企業は就業規則で上限を10日とする「裁判員休暇」を規定。審理が長期化すれば個別に対応している。一方、明確な規定がない企業や、審理期間中は無給となる企業もある。ある企業の担当者は規定を設けていない理由を「社員が裁判員に選ばれることを想定していない。対応は、選ばれてからになるだろう」と説明した。

 県弁護士会の鈴木康元会長(57)は「性質上、実際に裁判所の中で何が行われているかが伝わりにくく、企業側に現実味がないのではないか」と分析。「辞退率の問題解決には地元企業や経済団体の協力が必要」と訴える。