【裁判員制度10年】分かりやすい法廷に 「写真」ストレス配慮

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 10年で審理の進め方にも変化が生まれた。裁判員裁判がスタートすると、検察側も弁護側も専門用語を分かりやすい言葉に言い換えたりするなど「裁判員に分かりやすい」ことを心掛けるようになり、裁判員裁判では法曹三者の法廷内のやりとりが劇的に変わった。証拠の提出の仕方も、裁判員に事件の本質を知ってもらうように、かつ、ストレスとならないような配慮が取られるようになってきた。

 検察側、弁護側双方は、自らの主張を裁判員に理解してもらうため、写真や図面を多用する。その方法も2013(平成25)年、大きな転換があった。地裁郡山支部で審理され、死刑判決が出された強盗殺人事件。裁判員を務めた郡山市の女性が刺激の強い証拠に接したことで急性ストレス障害になったとして、国に損害賠償を求めて提訴した。

 裁判員制度が憲法の禁じる「意に反する苦役」などに当たるとし、制度は違憲であるとした女性側の主張は認められなかったが、その後、悲惨な事件現場の写真がイラストに変更されるようになるなど、証拠の出し方に一石を投じる形となった。

 ただ、過度の配慮には懸念の声もある。福島大行政政策学類で刑事法が専門の新村繁文特任教授(69)は「適切な事実認定と量刑を得るためには、証拠に基づく裁判が大原則」とした上で、「裁判員のストレスに配慮しなければいけない事情は理解できるが、被告の不利益になる裁判になってはいけない。裁判員のための裁判になってはいけない」とくぎを刺した。

 また、ある裁判官は、制度前に中心だった捜査段階の供述調書などに頼る「調書裁判」から、制度施行後は法廷でのやりとりを重視する「公判中心主義」へ転換が進んだと指摘する。

 初公判前に行われる公判前整理手続きでは、争点や証拠が絞り込まれる。福島地検の望月栄里子次席検事(47)は「捜査で集める証拠は全く変わらないが、裁判所に提出して実際に裁判員に見てもらう証拠書類の分量は大幅に減らしている」と説明した。
 最高裁が公表した報告書によると、裁判員裁判の法廷で証言した証人数はこの10年間で平均で1.6人から3.1人に倍増。法廷内で明かされる「証拠」を重要視している証しだ。

 求められているのは限られた時間で分かりやすく、短期の審理。県弁護士会の鈴木康元会長(57)は「県内の裁判員裁判の件数が少ないため、検察側と比べるとまだまだ弁護側が経験不足と言える。裁判員に伝わるアピールの仕方など改善する点も多い」と話した。