【裁判員制度10年】見える景色変わった...県内経験者が意見交換

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 本県の裁判員経験者は補充裁判員を含め1186人。「普段の生活とは違う一日で心身の疲れはあったが、それ以上に得るものは大きい」。21日に福島市と郡山市で開かれた裁判員経験者と法曹3者の意見交換会では、参加の意義を感じたとする意見がほとんどを占めた。ただ、中には参加することに不安を感じる人が多いように思えるとの指摘もあり、制度周知に工夫を求める声もあった。

 昨年、地裁郡山支部で放火事件の裁判に参加した22歳の男性は、裁判員を経験後、県内の出来事や各地のニュースに関心を持つようになった。「『こんなことがあったんだ』という目線から、『どうしてだろう』という見方に変わった」。男性は分からないからこその目線が大事だとし、「身構えることなく、若い世代もどんどん経験してほしい」と話した。

 自身の価値観に影響を与えたという女性も。地裁郡山支部での審理に関わった看護師女性は「自分が生きることに対して違った見方で見つめ直すようになった。一日一日を大切に生きたいと思える経験だった」と振り返った。女性は周囲の人にも、通知を受けたらぜひ参加するように勧めているという。

 辞退率が年々高くなっている状況に関しては、裁判所側に施策を求める意見があった。福島市の女性は、職場に提出するための文書が裁判所から出してもらえれば、仕事を休むことを職場にスムーズに伝えられると指摘。別の参加者は、企業側の理解を深めるため、企業に対する啓発活動に力を入れてほしいと要望した。また、「遠方に住んでおり、子どもを送ってから(裁判所に)行くには、開始時間が早かった」という意見もあり、裁判員候補者が地理的に広域にわたる本県特有の課題も浮かんだ。

 「傍聴席からの景色と全く違い、責任感を感じた」「自分たちの権利や責任を再確認した」。ニュースを見る際に人ごとではなく、より事件について考えるようになったという意見もあり、裁判員経験者は司法参加を前向きに捉えた。

 鹿子木康福島地裁所長に聞く 「まだ途上段階、今後も工夫」

 福島地裁の鹿子木(かのこぎ)康所長(58)に裁判員制度の成果や課題を聞いた。

 ―21日で制度開始から10年となった。
 「端的に言うと、量刑の変化が大きい。性犯罪事件がこれまでに比べ厳しくなっている一方、例えば介護に関わる殺人事件では裁判員から見て自分もあり得るという視点で感じるため、執行猶予が付く判決が出ているのではないか。国民視点が生かされる量刑ができているのではないか」

 ―裁判員候補者の辞退率が上昇し、出席率が低下する傾向が続いている。
 「参加しやすいように審理期間の短縮や裁判官の出前講座などを積極的に行い、制度の意義や運用状況など適切に情報発信していく。皆さんの不安の解消を図っていきたい」

 ―今後の課題は。
 「法律用語を分かってもらう説明ぶりを工夫しているが、これは裁判員が法律専門家に近寄ってもらうアプローチだった。今後は裁判員の率直な意見をどのように審理や判決に反映させるか。つまり、われわれが裁判員により近づいて、その意見を判決に反映させる工夫が必要になる。これはまだ途上段階で、今後も工夫を重ねる必要がある」