福島の『今』...伝えたい! 東京五輪・聖火リレールート決まる

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広野町の中高一貫校「ふたば未来学園」。双葉郡の教育復興のシンボルとして、生徒は世界にアピールする

 大会組織委員会が1日発表した東京五輪聖火リレーのルート概要。県内では東日本大震災、東京電力福島第1原発事故で被害の大きかった浜通りの市町村で聖火リレーが行われることになり、「復興五輪」を象徴した格好だ。聖火リレーは世界への発信源となるだけに市町村の関係者や住民はルート決定を喜んだ。

 茨城県高萩市から大熊町大川原の災害公営住宅に移り住む予定の新妻茂さん(70)。聖火リレーが故郷を通過するとの知らせに「楽しみだ。ぜひ見に行きたい」と声を弾ませた。

 大熊町で生まれ育ち、兼業農家としてコメなどを作っていた。原発事故で避難を経験。高萩市で妻と長男、長女と暮らすが、町の一部で避難指示が解除され、災害公営住宅に入居できるようになったことから引っ越しの準備を進める。

 新妻さんは1日、洗濯機を運び入れ、住宅の周りに花の苗を植えた。「聖火リレーが行われる来年3月ごろにランナーを花で迎えるのは難しいが、その頃には大熊町の復興が進んでいるはずだ。その姿を世界の人に見てもらいたい」と期待に胸を膨らませた。

 いわき市久之浜町にある複合商業施設「浜風きらら」の高木重行社長(62)は「聖火リレーを契機に、被災地の今を伝えたい」と力を込めた。地元は津波などの被害を受け、その後にできた施設は地域の人たちの生活を支えている。「どんな災害に遭っても元気に立ち直っている姿を世界の人に見てほしい」

 「被災した沿岸部を聖火ランナーが回るのは大変意義深い」と話すのは南相馬市小高区にある日鷲神社宮司の西山典友さん(66)。雲雀ケ原祭場地では聖火到着イベントが行われる予定で、「世界に誇る相馬野馬追に携わる者としてうれしい」と笑顔を見せた。相馬市の会社員桜井大地さん(30)は「前回の東京五輪は戦後の復興を象徴した。今回は震災復興の一つの節目となる五輪になってほしい」と願いを込めた。

 聖火リレーのほか、聖火到着イベントが行われることになった会津若松、郡山両市からも期待の声が聞かれた。鶴ケ城を管理する会津若松観光ビューローの新城猪之吉理事長(68)は「戊辰戦争で城は開城したが、今回は別の意味で全世界に向けて城を開きたい」と歓迎し、会津若松商工会議所の渋川恵男(ともお)会頭(72)は「土地柄が分かる場所を見せたい」と話した。

 郡山市体育協会長の松村賢剛さん(74)は福島大1年だった前回の東京五輪で聖火ランナーを務め、地元を走った。再び聖火が巡ることに「本県での聖火リレーが郡山でフィナーレを迎えるのは感慨深い。前回と同じように多くの市民で歓迎したい」と喜んだ。

 古里アピールの好機

 聖火リレーは地元の魅力を世界に発信するチャンスでもある。ルートに選ばれた県内市町村は復興した姿や雄大な自然、観光地など古里のアピールも狙っている。

 聖火リレーの出発地、Jヴィレッジから南に約3キロ離れた広野町の高台にある中高一貫校「ふたば未来学園」。高校3年で生徒会長の菅野光桜(みらい)さん(18)は「世界中の人に見てほしい」と意気込む。学園は双葉郡の教育復興のシンボルだ。菅野さんは、詳細なルートに学園を望む経路が組み込まれることを願いつつ「力強く歩む姿を発信したい」と強調した。

 「JR只見線沿線の絶景を世界に発信する機会になってほしい」。奥会津郷土写真家の星賢孝さん(70)=金山町=は、聖火リレーが只見線沿線を通る姿を思い描く。会員制交流サイト(SNS)でのPRなどが奏功して沿線を訪れる外国人旅行者は増加傾向にあるが、台湾などアジア圏が中心。星さんは、聖火リレーが欧州などからのファンの獲得につながってほしいと考えており、「絶景が映り込むようなコース設定がいい」と提案した。

 前回の東京五輪マラソン銅メダリスト、円谷幸吉の兄喜久造さん(87)=須賀川市=は、同市中心部の松明通りや円谷幸吉メモリアルホールのある須賀川アリーナ、幸吉の母校・須賀川高が通過ルートに選ばれることを希望。「市内を走るランナーを応援したい」と話した。

 伝統的家屋が魅力の下郷町・大内宿の観光協会長佐藤久夫さん(63)は「風情が残る大内宿の街道を聖火が通れば歴史的な光景が生まれるはずだ」と期待を込め、白河市観光ボランティア「ツーリズムガイド白河」の北住雅雄さん(67)は「復活した小峰城の石垣を望める城山公園をルートにしてほしい」と望んだ。