【参院選ふくしま前線ルポ・中通り】「英離脱」舌戦に波及 経済、高まる関心

 
商都・郡山市。市民の視線は日々の暮らしを豊かにする経済政策に注がれる

 「今こそ政権の安定が重要」「アベノミクスから転換を」―。公示後、初の日曜日となった26日、各候補は福島、郡山両市の大票田を中心に駆け巡った。

 英国の欧州連合(EU)離脱ショックは、各陣営の論戦にも波及した。参院選の争点の一つとされるアベノミクスの是非をはじめ、消費税増税の再延期に伴う社会保障財源の確保など、有権者の経済政策に注ぐ視線は一層強まっている。

 「給料が上がり、生活が少しでも豊かになったらいいな」。郡山市で管工事に従事する樫村拓晃(19)はこの夏、人生で初めて1票を投じる「新たな有権者」の一人。注目しているのは各党の経済政策だ。政府の経済政策は地方に届いているのだろうか。樫村は限定的だと感じている。

 高校卒業後、復興に携わりたいとの思いから県内で働くことを選んだ。求人が多くて就職先には困らなかったが、友人の中には「県内企業は賃金が安い」と県外に出ていった仲間もいた。「アベノミクスに期待する部分もある。でも地方への波及効果がなければ、発展はない」。賃金が増えれば県内で働くことを選ぶ人も増えるのだが―。樫村は思いを巡らす。

 本県からの人口流出が続けば、政府が進める「地方創生」にもブレーキがかかりかねない。社会保険料や公共料金の値上げなどについて郡山市の男性経営者(65)は「可処分所得が減り、サラリーマンは疲弊している」と話すなど、経営者側からも心配の声が漏れる。

 一方、福島市や県北では地元候補が不在で、各陣営が「重点地域」の一つと位置付ける。今後の経済の行方に関心を寄せる有権者は多いが、経済政策についての論戦が不十分との声も聞かれる。

 福島市の自営業三浦宗平(64)は「アベノミクスの効果はこれからと思っていたが、英国のEU離脱でどうなるのか。政治主導で対応するしかない」と危惧する。

 アベノミクスで応酬

 英国での国民投票を受け、岩城光英は「世界経済がどう変わるか分からない今、自公政権の安定が大事」と強調。「政権が代わったら世界的な経済危機に対応できるのか。自公政権にはノウハウがある」とアピールする。26日には、県北地方で遊説を展開した。

 対する増子輝彦は「円安・株高だけではうまくいかないことが証明された。アベノミクスは完全な失敗だ」とボルテージを上げた。「社会保険料を軽減し、利益を中小企業に回す」と元経済産業副大臣としての主張を展開。26日は郡山市で演説、政権批判を強めた。

 矢内筆勝は、経済政策について「消費税を5%に減税し個人消費を促す」と訴える。26日は郡山、二本松両市などで遊説した。(文中敬称略)