【参院選ふくしま前線ルポ・会津】風評や創生で論戦 古里の将来心配な10代

 

 現職の両候補は27日、それぞれ会津に入り個人演説会に臨んだが、会場には新たに有権者となる10代の姿は見えない。会津は衆院選5小選挙区の中で唯一、18、19歳の有権者が全体の2%を切る。少子高齢化に加え、基幹産業の観光や農業の風評被害も残る。地方創生に向けた喫緊の課題も多い。

 「みんなで集まれる場所が減った」。会津美里町の看護学校生村松きらり(18)は、古里の将来を心配する。

 小学生のころ、会津若松駅前のデパートが閉店、中学生の時に会津で唯一の映画館が閉館した。地元で就職し、働きながら結婚や子育てする将来を描くが、同級生の多くは東京の大学や専門学校に通う。「地元を元気にしたい」と町キャンペーンクルーになり、大好きな古里をPRしている。

 3年間にわたり県全体で展開し、今月終了するデスティネーションキャンペーン。今後も観光客を呼び込もうと、閉幕と同時に会津17市町村が連携して新たな大型企画を始める。

 震災から5年が過ぎても風評は拭えず、まだ起爆剤的な取り組みが必要とみて努力を重ねる。会津大の小松正都(18)は「経済も観光も衰退しているとは思わない。好きな所はたくさんあるし十分だ」と前を向く。

 二大政党の地元候補がいないこともあり、演説会の空席が目立つなど序盤の盛り上がりはいまひとつ。しかし、中盤以降は知名度の高い国会議員が会津入りする予定だ。各陣営は友好団体などへの呼び掛けや市街地での周知、新有権者を見据えて大学や専門学校近くでのチラシ配りなど、動きを加速させている。

 鍵を握る「恒三票」

 岩城光英は、過疎対策や会津縦貫南道路の早期整備などを訴える。政権中枢にいる閣僚の立場から「復興や経済活性化を進めるには政権とのパイプが不可欠」と強調。選対は保守票の掘り起こし策として、4年前に引退した渡部恒三を支持した層の切り崩しを狙う。

 増子輝彦は、農作物や教育旅行など風評が残る中で「安倍政権は復興を終わらせようとしている」と批判を強める。選対は、2年前の衆院選で維新の党公認だった小熊慎司を支持した「恒三票」が、民維合流で強固になったと手応えを感じており、票固めを進める。

 矢内筆勝は、序盤から出身地の金山町など奥会津で重点的に遊説を展開。「福島安全宣言」を世界に発信しての風評払拭(ふっしょく)を訴える。(文中敬称略)