住民票移さない学生...投票できる?できない?市町村で対応分かれる

 
選挙人名簿登録の判断は各市町村で分かれる。18歳選挙権の導入を機に、課題が表面化している

 実家に住民票を残したまま、県外の大学などに進学した学生の選挙人(有権者)名簿登録について、県内の市町村選管の判断が分かれている。居住実態の把握についての対応にばらつきがあり、不在者投票ができるところとできないところで、不公平が生じている。「18歳選挙権」の導入で改めて浮き彫りとなった。

 「投票所入場券に、子どもの名前が書かれていない」。会津若松市選管には、参院選の公示後、18~20歳の家族を持つ保護者や祖父母らから問い合わせが数件寄せられた。

 市選管は9月1日までに18歳を迎える若者に文書を送り、市内での生活実態を調査した。回答した人のうち、市内に「居住実態がない」と答えた約500人を選挙人名簿から除外した。

 公職選挙法では、3カ月以上居住実態のない住民は投票できないと定めている。公選法のこうした原則は住民にあまり知られておらず、若者の選挙権が注目された結果、こうしたケースが目立つようになった。喜多方市や会津坂下町、石川町なども居住実態がない場合、選挙人名簿への登録をしていない。地元市町村の名簿から削除されれば不在者投票もできなくなる。

 福島民友新聞社が不在者投票を認めているかどうか59市町村に取材した結果、約7割の市町村は「認めている」とした一方で、公選法を厳守している約3割の市町村では「認めていない」としている。

 総務省選挙課は福島民友新聞社の取材に対し「18、19歳だからといって住民票を移さなくてもいいとはいえない」との認識を示し、居住実態がない場合の選挙人名簿登録を認めていない。居住実態の把握は市町村に委ねられているが、避難区域を抱える市町村などでは実態調査を行うことが困難なことを理由に、居住実態がなくても投票を認めざるを得ないのが実情だ。

 選挙人名簿に登録されていても、不在者投票の請求の際に居住実態がないことが明らかになった場合、不在者投票を断る市町村もある。

 ただ、一部の市町村では公選法の運用に疑問を抱くところもある。「個人的な意見だが、18歳選挙権を踏まえれば制度は変えるべきだ。投票の権利が失われれば、せっかくの機会も政治への無関心に拍車がかかる」と心配する声が上がる。