【参院選・激戦の余波(上)】自民、総力戦実らず 現職閣僚落選の衝撃

 
安倍晋三首相や閣僚、党幹部らを続々と本県に投入、現職法相の議席を死守しようとしたが、自民党は初の改選議席ゼロに終わった=公示日の6月22日、須賀川

 ほんの数時間前まで包んだ熱気は消えうせ、閑散としていた。11日の自民党・岩城光英の地元いわき市にある選挙事務所。「復興を後押しできる候補だったが、われわれの熱意が浸透しなかったか...」。70代の男性スタッフは、法相の落選という現実を受け止めきれないでいた。

 6年前の参院選。民進党・増子輝彦はトップ当選を果たし、岩城は2682票差に甘んじた。今回初の「野党共闘」で臨んできた増子に対して岩城は、何としても票を上積みしなければならなかった。

 党本部は県連、支援団体と協力して総力戦を展開。「こんな選挙は十数年ぶりだ。まさに命懸けの戦い」と県連幹部が驚くほどだった。陣営は最後まで組織票の掘り起こしに努めた。首相の安倍晋三も公示後2度、県内に入り、閣僚や党幹部も県内隅々まで遊説、必死に支持を訴えた。終盤にはその差を詰めたとの情報もあったが、増子を追い抜くことはできなかった。

 「公示前後を問わず閣議はある。地元にもっと帰って政策を訴えることができれば...」。衝撃に揺れた10日夜、福島市太平寺の選挙事務所で自民党県連幹事長の吉田栄光はつぶやいた。

 支持者を前に岩城は目を潤ませながら口を開いた。「これからも復興に携わっていきたい」。ショックで静まりかえった事務所に、岩城の声だけが響いた。11日、県連は福島市で役員会を開いた。

 「懸命に復興進める」

 「復興をしっかり前に進めなければならない」。会長の根本匠、県連幹事長の吉田栄光らが出席した自民党県連役員会で、元復興相の根本は決意をにじませた。

 「福島の復興が遅れるのではないか」。敗北から一夜明けた11日、福島市の県連事務所には、現職閣僚の落選に伴う復興政策への影響を心配する声が届いた。

 双葉郡選出の県議吉田は「大臣を失えば、さまざまな影響が考えられる」と衝撃の余波の大きさを読み切れていない。それでも、県民の懸念を払拭(ふっしょく)するため最善を尽くす構えだ。「批判は批判として受け止め、今まで以上に党本部と連携し復興を進める」。吉田は今週中に上京し党役員らと選挙結果などを協議する。

 参院選の選挙結果を見ると、衆院選挙区別の得票数で岩城が勝利したのは地盤の衆院福島5区のみ。だが、民進党県連代表の玄葉光一郎の地盤3区で食い込むなど収穫もあった。

 戦いには敗れたが"異例の組織戦"で党本部と県連、支援団体が結束して接戦に持ち込んだ手応えも感じている。根本は「選挙を経てさらに党を充実・強化させ、活力ある国民政党をつくり上げる」と力を込めた。

 27年ぶりの単独過半数は逃したものの、自民は勢力を伸ばし、首相の政権基盤は強化された。県連幹部も「今回は負けた。ただ、われわれの仕事は県民を支えていくこと。きょうから前に進む」と意気込む。敗北をどう乗り越えるか、県連の力が試される。(文中敬称略)

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 2人の現職が一つのいすを争った参院選福島選挙区は、野党統一候補の民進現職が勝利、自民は県内で初の改選議席ゼロとなった。本県の政治にどう影響するのか。激戦を振り返り、今後を占う。