「投票後も関心持って」 福島大行政政策学類教授・中川伸二氏

 

 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたことで、10代をはじめ若者の政治参加が注目されている。現代政治論などが専門の中川伸二福島大行政政策学類教授に投票の意義や政治参加の在り方について話を聞いた。

 英国の(欧州連合からの離脱を問う)国民投票では、「離脱」という結果が多数派意思として示された。若い世代の多くは残留支持だったという現地報道があるが、世代や階級、地域で投票結果に明確な違いが出た。二者択一の極端な例だが、一票一票の積み重ねが変化につながり、国だけでなく世界をも変えてしまうことを改めて実感させられた。

 「個人自立型」への変化

 日本においても相対的に個人の1票の価値が高まる個人自立型の政治への変化が起き始めている。首長選では特にこの傾向が顕著で、多くの候補者が無党派を自称し選挙に臨むようになっている。ここでは政党よりも個人の選択の積み重ねが政治の行方を決める。

 しかし国政選挙は政党本位の選挙制度が導入されていて、有権者と政治のミスマッチが目立ち始めている。

 例えるなら、個性的な品ぞろえの店で自分好みの買い物をしたいのに、実際は大きなデパートしかないような状況だ。デパートは多くの客のニーズに応えるため、品ぞろえは豊富でも無難なものになりがちである。

 選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたが、これまで20歳で初めて投票を経験した人と違いはない。自分で考えて決めることが大切だ。考えた結果、投票しない選択肢もある。選挙だけが政治参加ではなく、投票の後に政治がどう動いたか、関心を継続させ、考え続けることが政治参加だと思う。

 投票をしたからと、その後は傍観者であっていいのか。それでは「点」で終わる。政治の動きを追い、次の投票までを「線」で考えることが大切だ。投票をきっかけに知ることから始めよう。自分と政治の関わりを自覚すれば、興味や行動が生まれる可能性もある。

 なかがわ・しんじ 熊本県生まれ。九州大大学院を経て、九州大法学部助手、福島大行政政策学類長などを歴任。