「継続」「刷新」問う、自民対民進のぞかせる 田村市長選ルポ

 
12年前の町村合併後、初めての選挙戦となった田村市長選。市政の継続か刷新か、有権者の判断が注目される=3日、田村市役所前

 任期満了に伴う田村市長選は9日の投開票に向け、現職の冨塚宥暻候補(71)=3期、無所属=と新人で前県議の本田仁一候補(54)=無所属=が舌戦を繰り広げる。福島第1原発事故で拍車が掛かった人口減少社会への対策では両者とも公約に目立った差異は見られず、市政の「継続」か「刷新」かを問う。激戦を最前線で追った。

 「無投票が続いて関心がなかった。田村市内の状況を改めて考え、投票したい」。春の陽気に包まれた3日、市役所前にある市長選の看板を前に、60代の女性は話した。しかし、大票田の船引町に両陣営が入ると、互いの主張がぶつかり合い、一騎打ちの激しさを市民は肌で感じる。

 「若者まで支持が浸透しているのか分からない」。船引町東部台の国道349号沿いにある冨塚の選挙事務所は若手の支援者が出入りして活気づくが、事務局長代行の吉田豊(68)は手綱を緩めない。12年間で高齢化した後援会組織への危機感が背景にある。

 3日、冨塚の選挙カーは都路や船引などを巡り、郷土の復興や福祉の充実などの公約を掲げ、市政の継続を訴えた。吉田は「12年前の町村合併以来、確実に政策を進めた冨塚の力が必要だ」と語気を強める。

 本田は3日、船引町船引の国道288号沿いの選挙事務所を出発、滝根や船引などで市政刷新を訴えた。政策の差別化を手探りで進めながら、市長報酬を3割削減して教育財源に充てる独自政策をアピールした。

 事務所で忙しく動くスタッフのジャンパーに刻まれた「積極的にチャレンジする田村市!」の文字。選対本部長の遠藤正徳(67)は「市政を変えてほしいという有権者の声を集約した。本田なら民間の知恵で政策をもっと早く形にできる」と熱を込める。

 両陣営とも「市民党」を掲げる。しかし冨塚の出陣式には船引町出身で民進党県連代表の元外相玄葉光一郎(福島3区)が姿を見せ、自民党県連会長で元復興相の根本匠(福島2区)は本田を応援する。次期衆院選での自民対民進の対決ものぞかせながら、戦いは中盤戦に入る。(文中敬称略)