各候補「どこで支持訴えれば」 浪江町議選、有権者分散に困惑

 
浪江町役場前に設置された選挙ポスター掲示板

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が、帰還困難区域を除く地域で3月末に解除された浪江町で13日に告示された町議選は、定数16に17人が立候補し選挙戦に突入した。帰還や復興公営住宅の整備が進み、2013(平成25)年の前回から町民がさらに分散、各候補は「どこで支持を訴えていいのか」と手探りの選挙戦を不安視し、選挙カーを使う候補も少ない。一方、有権者からは「復興を担う重要な仕事だけに、投票で選びたい」と選挙戦を歓迎する声が聞かれた。

 13日午後、町役場近くに設けられた掲示板には8年ぶりに候補者のポスターがほぼ出そろった。しかし、町民の多くは町外で避難を継続中。4年前の前回以降、仮設住宅から転居し新たな土地で生活再建している町民も増えている。支持を広げるためには、いかに有権者の居場所を把握するかが各候補とも最重要課題。避難指示が解除された町村で本格的に選挙が展開されるケースとあって他町村からも注目を集めている。

 "大票田"となるのは、前回と同様に、3月まで町役場の機能があった二本松市を中心とした中通り北部。ある現職候補は「議会も今後町内に戻る。やはり地元で支持を訴えたい」と町内で支持を訴えたものの町民の姿はほとんどなく、苦笑いを浮かべた。

 ある新人候補は町外の仮設住宅や復興公営住宅を重視、ミニ集会や電話で知人に投票を呼び掛けているが手応えは感じられない。「初の選挙で普通の選挙戦術すら分からない。まして町外に町民が避難している現状でどうするのがいいのか」

 一方、有権者の思いはさまざまだ。避難指示解除後に帰町し、町内で店舗を経営する男性(68)は「若い人を中心に町内に人を呼び込んでくれるような候補がいい」と各候補の政見に期待。帰還困難区域の津島地区の自宅から避難し、花見のため町を訪れた女性(65)は「選挙戦初日なのに町中に選挙カーが見られないのは少し寂しい」と話した。
 
 投票率は50%前後か

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故前の2009(平成21)年4月に行われた町議選は、投票率が78.17%なのに対し、震災・原発事故後の13年4月に行われた町議選は避難生活の影響などで、約25ポイント下回る53.81%だった。

 町選管は、昨年7月の参院選の投票率49.23%を踏まえ、50%前後の投票率を見込んでいる。立候補者数も09年が定数20を超える22人、定数16に減った13年も23人だったのに対し、今回は17人にとどまり、帰還などの状況次第では今後、立候補が定数に満たない可能性もある。

 同選管の山本邦一書記長(57)は「選挙期間の延長や候補者説明会の徹底した周知が重要」としている。