現・新が手探りで支持拡大へ奔走 富岡町長選・終盤の情勢

 

 任期満了に伴う富岡町長選は30日の投票に向け終盤戦に入り、現職で再選を目指す宮本皓一候補(70)と、新人で前町議の山本育男氏(58)が票の上積みを狙い、しのぎを削る。東京電力福島第1原発事故による避難指示は帰還困難区域を除き4月に解除されたが、人口約1万3300人のうち町内に戻った住民は200人に満たず、両候補は避難者が多いいわき、郡山両市の復興公営住宅や仮設住宅などを中心に遊説、手探りで支持拡大に奔走している。

 宮本候補は避難指示解除前に、町内に災害公営住宅や診療所、複合商業施設、路線バスを整備し、帰還の足掛かりとなる環境を整えた実績を強調。「町政の継続により目標を定めて復興を加速させる」として「帰還困難区域全体の再生を成し遂げ、古里富岡を未来につなぐ」と力を込める。町議13人のうち9人が支持を表明、票固めを進める。

 山本候補は現在の町政に対し、インフラ整備に偏重していると疑問を投げ掛け「復興の主役は人だ」と主張。生活サポート補助金制度の創設を掲げ「町内外の町民の生活再建と生業(なりわい)復活を後押しする」と訴える。町議5期や町商工会長の経験で培った人脈で支持拡大を図り「町民の声を聞き、新しいまちづくりを進める」と町政刷新を訴える。

 両陣営ともに、町民約6千人が生活するいわき市、約2500人が暮らす郡山市が勝敗の鍵を握るとみて終盤にかけて重点的に遊説する。昨年3月の町議選で投票率が44%に伸び悩んだため、両陣営は投票率を40~50%程度と予想する。

 ある陣営幹部は「4年前の前回と違って仮設住宅を退去した人が多く、支持動向が読み切れない。震災から6年が過ぎ、避難先に住居を構えたことで関心が薄れているのが心配だ」と選挙戦術の難しさを語った。