家族や地域つながり薄れ...議員活動の負担大 楢葉町議選定数割れ

 
楢葉町役場前に張られた選挙ポスター。定数12に対し11人の立候補にとどまった。ポスターを張らない候補者もいた=27日午後4時35分ごろ、楢葉町北田

 定数12に対し、立候補者が11人にとどまり、定数を1人下回る状態で無投票当選が決まった27日告示の楢葉町議選。県内市町村議選では補選を除き初めて定数割れのままに終わった選挙は、原発事故による全町避難を経て町民が議員のなり手を敬遠する現実を突き付けた。

 立候補の届け出の受け付け会場となった楢葉町役場3階の会議室前。午後5時すぎ、受け付け終了を宣言した猪狩敬一町選管委員長(81)は「定数割れは想定外で残念」と唇をかんだ。

 複数の現職によると、今回の選挙で、原発事故による全町避難を経て家族や地域コミュニティーのつながりがさらに希薄となり、選挙活動への理解を求めたり、支持を集めたりするのが一層難しくなった。震災から6年が過ぎ、避難先に住居を構えたことで町政への関心が薄れていると感じた候補者も多かった。

 町役場に隣接する仮設商店街「ここなら商店街」に小学1年の男児と買い物に来た女性(36)は結果を聞いて「30~40代の若い人が選挙に出れば、町が活発になるのに」と感想を語った。

 働き手の世代にとって時間を拘束される議員活動の負担は大きく、仕事と両立して生活するのは難しい。議員報酬は年間358万円(期末手当込み)で「報酬だけでは食べていけない」(現職)との声も上がる。立候補した唯一の新人で会社員の岩間尊弥さん(49)は避難先のいわき市から子どもを連れて町内に戻り、生活に不便さを感じたことが立候補の動機となった。「避難先から帰りたくなるような魅力あるまちづくりに協力したい。自分がどれだけ支持されるのか、選挙で信任を得たかった」と話した。

 4年前の前回選挙は定数14を2削減して行われた。今回の結果を受け、議会内で定数削減の議論は避けられない情勢だ。ただ、町の本年度一般会計予算は当初ベースで143億3880万円と過去2番目の規模で、復興事業で膨らんだ予算を執行する町政へのチェック体制をどう確保するか、議会の存在意義が問われる。

 町内の災害公営住宅で暮らす男性(73)は町議選の候補者が定数を下回ったと聞き渋い表情。「復興はこれからなのに(議員不足が)ブレーキにならないか心配だ」と表情を曇らせた。