【福島市長選ルポ】政策差別化に懸命 復興や待機児童、将来像

 
市中心部の公園前に掲載されたポスター。各陣営とも子育て支援や産業振興などの政策を掲げるが、独自色を打ち出すのに懸命だ

 19日投開票の福島市長選は中盤戦に入り、いずれも無所属で、現職の小林香候補(58)、新人の法井太閤候補(72)、新人の木幡浩候補(57)、新人の桜田葉子候補(60)の4人が激しい舌戦を展開している。遊説では復興や待機児童対策、来春の中核市移行後の将来像などの公約を強調するが目立った争点はなく、各陣営は有権者の反応に神経をとがらせる。晩秋の県都決戦の最前線を追った。

 「福島市は今、大きく変わりつつある」。告示翌日の13日、リニューアル工事が進む福島駅前通りで演説に立った小林は、1期4年間の実績を声高に強調した。慣例にとらわれない市政改革を掲げ、トップダウンでの中核市移行や住宅除染を進めた半面、その政策の進め方などを巡って市議会との対立は深まった。

 市政刷新を訴え現職を破った前回と、政党や特定組織に頼らない草の根選挙の戦術は変わらない。今回は4年間の評価が問われるが、選対本部長の菅野良二(61)は「まだ改革の形ができたところ。前進には継続が必要だ」と強調する。

 市南町の旧国道4号沿いに構えた木幡の事務所。議員や団体の為書きが並ぶ。現職の手法に不満を持つ自民、民進、社民など超党派の市議に推される形で出馬を決めて4カ月、ミニ集会を重ね、22の後援会を築いた。13日の個人演説会で木幡は「知名度ゼロからスタートし、ようやくしっぽが見えてきた」と声を張った。

 市議35人の約半数が支持し強固な体制を敷く。しかし与野党一騎打ちとなった先月の衆院選ではしのぎを削った県議と市議が呉越同舟で戦う。選対本部長の元市議会議長佐藤真五(80)は「国政と地元は別だ。しこりはない」と語気を強める。

 「福島で生きる」「ともに活(い)きる」。市北矢野目にある桜田の事務所前ののぼり旗に書かれた文字だ。福島市出身で、県議を4期14年務めた桜田の思いを込めた。市外出身者で、ともに元官僚の小林、木幡との差別化を打ち出し、市民に身近なイメージを強調、県内初の女性市長誕生を目指す。

 2年前の県議選では県内最多得票した原動力となった市内約60の後援会と、支援を受ける自民系市議の組織を軸に票固めを進める。前県歯科医師会長で選対本部長の金子振(おさむ)(70)は「中盤戦以降、浮動票をどれだけ上乗せできるかが鍵だ」と表情を引き締める。

 市長選への挑戦は3度目となる法井は、市御山の幼児園を拠点に、子育て支援金の給付など独自の公約を訴え、支持拡大を図る。

 各陣営の思惑が交錯する中、多くの陣営関係者からは「有権者の反応がつかみにくい」との声が漏れる。水面下での政党の動きなども複雑に絡み合い、情勢はいまだ霧中だ。(敬称略)