広野町長に現職・遠藤智氏 2新人退け再選、町政継続で復興へ

 
再選を果たし万歳する遠藤氏(中央)。左は妻浩美さん

 任期満了に伴う広野町長選の投票が19日行われ、即日開票の結果、無所属で現職の遠藤智氏(56)=1期=が、元副町長の黒田耕喜氏(65)と、元県職員の岡田秀平氏(68)の無所属新人2人を破り、再選を果たした。任期は12月9日から4年。

 東日本大震災後2度目の町長選は、東京電力福島第1原発事故による一時避難を経て8割の住民が帰還した中、医療や高齢者福祉、子育て支援の充実を中心に生活環境の改善にどう取り組むかが争点となった。

 復興拠点として再開発が進むJR広野駅東側地区と商店街がある駅西側地区の在り方、復興を加速させる産業政策、3000人を超える作業員との共生など今後のまちづくりを巡り、町政の継続か、刷新かが問われた。

 町民の生活再建を柱に据え、1期目で国や県との連携体制を築きながら復興を着実に進めてきた遠藤氏の実績が評価され、有権者は再びかじ取り役を託した。

 投票率は77.58%で、前回の81.19%を3.61ポイント下回り、前回に続き過去最低を更新した。当日有権者数は4192人(男性2163人、女性2029人)。当選証書付与式は20日、町役場で行われる。

 国、県とのパイプ訴え

 震災後2度目の広野町長選は、4年間で復興を前に進め、8割の町民の帰還に結び付けた現職の遠藤智氏(56)を有権者が信任、町政の継続による復興の加速化を選択した。

 遠藤氏は7月に再選出馬を表明。表立った活動を控えていた後援会を再構築、告示までに20回以上のミニ集会を重ね、町政継続の必要性を訴えた。初の総決起大会には与党国会議員や県議を迎え、国や県とのパイプの太さをアピール。新人への危機感から組織を引き締め、票固めを徹底した。

 新人で元副町長の黒田耕喜氏(65)は同級生らの後押しで約1年半前から準備に入り、5月に出馬を表明。42年の行政職で培った経験と「町民目線の政治」を前面に掲げて現町政への批判票の取り込みを狙ったが、組織力で及ばなかった。

 新人で元県職員の岡田秀平氏(68)は駅前商店街の再生を主張し、草の根による選挙戦を展開したが、浸透しきれなかった。

 遠藤、黒田両氏は同じ折木地区が地元で、4年前の前回に続いて支持に回った町議10人が二分するなど選挙戦では地縁、血縁も絡んで根深い対立を残した。

 町内では約4000人の町民と3000人を超える作業員らが共に暮らし、安心して生活できる環境づくりは待ったなしだ。双葉郡でいち早く復興に着手した広野町のまちづくりは郡全体にも影響する。町民同士の融和を図り、地域の再生を軌道に乗せられるか、遠藤氏の手腕が問われる。

◇広野町長選開票結果 (選管最終、敬称略)
当1,811 遠藤  智 56 無現
 1,318 黒田 耕喜 65 無新
   100 岡田 秀平 68 無新