【相馬市長選ルポ】復興後の針路問う 「継続」「刷新」選択へ

 
2020年度の全線開通を目標に整備が進められる復興支援道路「相馬福島道路」(左奥)。ハード面の復旧、復興の進展とともに、子育て支援や人材育成などを重点政策に掲げる両陣営。継続か刷新か、有権者の判断が注目される

 24日投開票の相馬市長選は、いずれも無所属で、現職の立谷秀清(66)=4期、新人で元同市議の荒川五郎(69)の両候補が4年前の前回と同様に激突し、復旧・復興を担ってきた現市政への評価や地方創生などを争点に舌戦を繰り広げている。2020年度の実施期間まで残り3年となった国の復興・創生期間やその先の将来像を見据え、有権者は継続、刷新のどちらを選ぶのか。師走の相馬決戦を追った。(文中敬称略)

 「復興の総仕上げを任せてほしい」。告示から一夜明け、厳しい冷え込みが緩んだ18日、立谷は復興支援道路「相馬福島道路」の整備が急ピッチで進められる山上地区などを巡り、市政の継続を訴えた。

 震災と原発事故から6年9カ月。相馬福島道路や相馬港周辺整備などの復旧、復興の見通しが立ったことを踏まえ、立谷は「地方創生が重要」と強調。税外収入を財源に給食費を今後30年間無料化する政策を目玉に据えるなど、子育て支援や教育の一層の充実にも力を入れ、支持拡大を狙う。

 立谷の得票数は約1万3000票を獲得した01年の初当選時に比べ、前回は9385票にとどまり、荒川に275票差まで肉薄された。選対本部長を務める県議の斎藤勝利(73)は「前回は油断があった。立谷の実行力で復興を成し遂げるためフル稼働で選挙対応に当たる」と気を引き締める。

 「ハード面の整備は進んできたが、全て行政主導。市民主導の政治にしたい」と刷新を訴える荒川は18日、松川浦や磯部など、津波で被災した沿岸部を遊説し、現職に対する批判票の取り込みを図った。

 荒川の政策の柱は人材の育成。子育てや高齢者をサポートする人材や独身者の結婚を結び付ける「縁結び隊」の育成、後継者不足が課題の農業の担い手を育成する専門学校の誘致などを掲げる。給食費の無償化にも努めるとの公約も打ち出す。各行政区で市民懇談会を開催するなど、「市民の声を聞く市民協働の政治」の実現も訴える。

 選対本部長の森宗義(67)は「荒川は市議時代から、相馬の発展には人材育成が重要と一貫して訴えてきた」と代弁。「箱物ばかりで将来の市の財政は大丈夫なのか。多選の弊害もある。草の根活動で変革を訴えたい」と語る。

 中盤戦に向け激しさを増す両陣営とは裏腹に市民の反応は低調だ。選挙カーが行き交う国道6号沿いの商業施設で買い物を済ませた相馬市のアルバイト女性(55)は「いずれにしても復興需要は落ち着き、特別な時間は終わった。これからの相馬市にどんな未来があるのか」と指摘する。市民は、両候補が訴える政策の先にあるまちの将来像に厳しい目を向ける。