【南相馬市長選ルポ】復興加速化で舌戦 2氏、市民融和も訴え

 
復旧作業が行われている市沿岸部を走る選挙カー。市長選では今後の復興の在り方が問われている

 21日投開票の南相馬市長選は中盤戦に入り、新人で元市経済部長の門馬和夫(63)=無所属=と、3選を目指す現職の桜井勝延(62)=同=の2氏が激しく競り合う。告示後初の週末を迎えた13日、両候補は2016年に大部分の避難指示が解除された小高区を精力的に遊説。復興加速を軸とした市の将来像を問う市長選に、有権者はどう審判を下すのか。(敬称略)

 「対話の姿勢で家族や友人が共に暮らせる街をつくる」。門馬は13日、小高区の演説会で声を張った。原発事故による避難区域の線引きで、賠償金などを巡り原町、鹿島、小高の各区住民の感情に複雑な溝ができた現状を意識して、住民の融和を公約の柱に据えた。

 「これからは復興の『肉付け』が必要だ。市職員として経済や財政に携わった門馬なら、市政の中身がよく分かる」。選対本部長の市議平田武(69)は、市経済部長や市立総合病院事務部長を歴任した行政経験から、門馬を「即戦力」と評価。陣営のチラシにも、公共施設の統廃合や小高区での入院機能再開など、市政刷新の公約を列挙し、門馬の手腕を強調する。

 原町区桜井町に構えた事務所には、門馬が首相の安倍晋三と握手を交わす写真が張ってある。自民党は支援候補が前々回、前回と連続で桜井に敗れており、公明党の支援を受けながら必勝を期す。「市民党」を掲げながらも、自民党衆院議員の亀岡偉民や地元選出県議で自民党県連幹事長の太田光秋ら有力議員の後援会組織が票固めに奔走する。

 「小高の復興を完了させるのが最大の仕事」。桜井は13日、小高区の商店街で支持を訴えた。トレーニングウエア姿で選挙カーの前を走り、有権者と握手を繰り返すスタイルは、市議時代から貫いている。震災と原発事故後、復興をリードしてきた実績を示しながら、マラソンで培った体力と精神力を有権者にアピールする。

 「みんなで力を合わせて復興から発展へ」。原町区栄町の事務所に置かれた桜井のチラシにも、市民の融和が復興につながることを訴える言葉が並ぶ。「国や県に言うべき事を言い、培ってきた人脈がある」。選対事務局長の市議小川尚一(62)は、インフラの復旧や保育料無料化など実現した施策に加え、国との折衝で霞が関に幾度も通い、パイプを築いた桜井の2期8年の実績を代弁する。

 事務所には、民進党県連代表代行の衆院議員金子恵美(無所属)や、地元選出の民進党県議高野光二、非自民系の市議の後援会関係者が出入りし、選対を支える。小川は情勢を「五分五分」と分析し、選対の引き締めを徹底する。

 市を二分した舌戦が続く中、多くの市民は聞こえが良い復興策の連呼を懐疑的に見つめる。住民の帰還率が3割に満たない小高区の個人事業主の男性(31)は「どうすれば小高に人が戻るのか。両候補とも再興する具体的な方向性を示してほしい」と話す。