相馬市の手法注目!市長選スピード開票42分 市町村で改善可能

 

 開票終了予定時刻を大幅に超過するケースもある県内自治体の開票作業。改革マニュアルの導入により安定した作業を実施している相馬市の取り組みに注目が集まっている。昨年12月の相馬市長選では、42分で選管確定を出すスピード開票を実現。市町村の多くは時間や予算を理由に改善が進んでいないが、識者からは「手法次第で十分に改革は可能」との声もある。

 ◆◇◇全国的に高評価

 「全国的に見ても大変素晴らしい結果」。議会や選挙事務改革に取り組む早稲田大マニフェスト研究所は相馬市長選の開票作業データを分析し、評価した。

 相馬市長選は午後8時に開票を開始。50人の職員が携わり、同8時42分に選管確定を出した。相馬市と同様の規模の市では、一般的に職員70人程度で行い、早くても60~70分の時間がかかるという。早大研の改革マニュアルは伊達市も参考にして開票の効率化を図っている。県選管は「各市町村で開票作業短縮の努力を行っているが、相馬市ほど熱心な取り組みはない。昔から各市町村に紹介している」としている。

 ◇◆◇配置方式を改め

 相馬市の改革マニュアル導入は2006(平成18)年11月の知事選の開票作業から。早大研が提唱する開票時間短縮運動に同調、東北で初めて実施した。票を仕分けしやすいようにイチゴパックの使用も県内で先駆けて取り入れた。

 一般的な開票で行われている作業工程ごとに担当職員を配置する方式を改め、複数のグループが「開票係」「点検係」「計算係」など作業の流れに沿って移動する。以前行った知事選と比べて30分以上短縮になり、人員も2割削減、当時の開票時間の日本記録を5分以上更新する25分で開票作業を終了した。住民サービス向上とともに経費節減にも役立っている。

 庁内には各課から集う約10人による開票プロジェクトチームを設置、選挙のたびにマニュアルを改訂している。メンバーは選挙ごとに数人が入れ替わり、経験の蓄積と継承を図っている。毎回必ず行うシミュレーションが時間短縮と正確性の最も大きな要因で、担当の職員が集い、タイムテーブルに沿って作業の流れを確認したほか「開票当日は寒さ対策が必要」などの声も飛んだ。

 ◇◇◆10万票超えても

 昨年10月の衆院選では、票の確認に時間を要したなど予定時間を超過する市町村が多くみられた。相馬市と同様の取り組みの広がりが期待されるが、同市選管の川崎陽一事務局長(49)は「最も重要なのはリハーサル。職員が多く、集まるのが難しい大規模な市では難しいのかも」と話す。

 早大研の中村健事務局長(46)は、中核市や政令指定都市でも同様の取り組みは可能だと指摘。扱う票数が10万票を超える船橋市(千葉)や高崎市(群馬)などの中核市でも、同様の開票作業改革で成果が出ているという。中村氏は「時間や人、金がないという意見は聞くが、その上で考えることが大事。各役職の職員が同じフィールドで共通の目標に向かうことは、行政のマネジメントを進めることにもつながる」と強調した。