二本松に役場避難『決断』 辞意の馬場浪江町長、暮らし再建指揮

 
避難指示解除を受け、町職員に訓示する馬場町長=2017年3月、浪江町役場

 浪江町の馬場有町長(69)は町長1期目に東日本大震災があり、東京電力福島第1原発事故による避難で、役場機能を隣接する中通りの二本松市に移すことを決断した。「すべての町民の暮らしを再建する」「ふるさとなみえを再生する」「被災経験を次代や日本に生かす」を復興の基本方針に指揮を執った。

 馬場氏は一部地域を除く2017(平成29)年3月末の避難指示解除に合わせ、町内の自宅に居住。真の復興のスタートラインに立ち、故郷を守る「町のこし」の取り組みを進めた。

 13年には原発事故に伴う町民の慰謝料増額を求め、町が代理人となり原子力損害賠償紛争解決センターに裁判外紛争解決手続き(ADR)を申し立てた。

 申し立てには最終的に町民約1万5700人が参加。センターは14年3月、現行の1人当たり月10万円の精神的慰謝料に5万円上乗せなどを盛り込んだ和解案を示した。町は受け入れの姿勢を示したが、東電は受け入れを拒否。センターは今年4月、和解仲介手続きの打ち切りを決めた。

 今春には町内でなみえ創成小、中学校を開校したほか、認定こども園「浪江にじいろこども園」を開園した。町は帰還困難区域で住民が再び住めるようにする特定復興再生拠点区域(復興拠点)の整備計画を申請、昨年12月に政府の認定を受け、今年5月末に同区域で先行する除染などの作業が始まった。