【福島県知事選・争点を問う】実感薄い産業施策 地元参入に課題

 
拠点整備を見据えロボット開発を進める渡辺さん

 10月11日告示、同28日投票の知事選は告示まで残り2カ月を切った。現職の内堀雅雄氏(54)は6月に立候補を表明。一部に候補者擁立を目指す動きはあるが、選挙戦の構図は不透明なままだ。一方、選挙戦の行方にかかわらず、復興道半ばの本県には課題が山積し、その課題解決に向けた考え、方策が争点になることは間違いない。内堀県政の4年間の検証を通し知事選の争点を探る。

 「世界中の企業がロボットテストフィールドで災害対応ロボットやドローンをテストする。地元企業にも部品製造などで波及効果が広がり、交流人口も増える。そんな当初想定していた効果は本当に生まれるのだろうか」

 南相馬市の精密機械部品製造「タカワ精密」取締役の渡辺光貴さん(36)は地元住民の思いを代弁する。7年前は津波のがれきで埋め尽くされていた同市沿岸部に県が約155億円を投じて建設する福島ロボットテストフィールド。水没した市街地や土砂崩れ現場を再現した災害対応ロボットの一大拠点として全国の研究者、企業の期待を一身に受けて着々と工事が進むのとは裏腹に、地元企業や住民の実感はまだ薄い。

 拠点整備を見据え、4年前からロボット開発事業に乗り出した渡辺さんもこれまで、湖底の放射性物質を調査する水中ロボットなど3台を開発、売り込みに力を入れているが、契約には至っていない。「大手のロボット製作者から『それよりも地元にロボットのテストを委託できる業者はないのか』と言われたことがある。ここに人がやって来る仕組みをつくらなければ、拠点がある意味は薄れてしまう」と危惧する。

 ■復興財源は縮小

 テストフィールドの整備と併せ、県はロボット産業に参入する県内企業向けの補助制度を創設。産学官による「ロボット産業推進協議会」も発足した。県内では製造業などを中心に独自技術を生かした参入の動きがある一方、中小企業単独での技術開発は困難との声も多い。県が目指すロボット産業集積を巡っては試行錯誤が続く。

 長期にわたる本県振興の枠組みを構築するため、内堀県政は同拠点をはじめとする福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想関連やふくしま国際医療科学センター、ふくしま医療機器開発支援センターなど大型施設整備を進めてきた。各施設は復興の「看板」として期待される半面、長期にわたり維持する財源確保という重大な課題も背負うことになった。

 インフラの大型復旧・除染や住宅整備などの復興・復旧事業がヤマ場を越えたことで復興財源は着実に縮小している。本年度一般会計当初予算額は震災、原発事故後の当初予算としては最小規模となった。

 政府の復興期間が終了する2020年度末まで2年余り。「各省庁とも20年度以降の財源確保が相当厳しくなる。正直、先が見えない」。県幹部の言葉に強い危機感がにじむ。

 復興に向けたハード事業で実現させた拠点・施設を効果的に運用し、将来にわたり復興を支える財産とすることができるか。原子力災害からの復興という前例のない挑戦を続ける本県は知事選にかかわらず「復興・創生」を進める上で多くの課題を背負い続けている。