【復興の道標・自立-1】「お願い、当然の権利」 再起阻む「支援慣れ」

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震災と原発事故から4年8カ月以上たち、人影もまばらになった仮設住宅。避難の長期化に伴う自立心の低下を指摘する声が上がっている

 「復興住宅の家賃は、県が東電から徴収するべきだ」。今年春ごろ、二本松市の仮設住宅に避難する浪江町の男性(82)が同市にある町役場出張所を訪れ、そう申し入れると、担当者は困ったような表情を浮かべた。「復興住宅に移っても避難場所が変わるだけのこと。賠償は続くはず」と考えていた。

 自宅は町の帰還困難区域内。移住も選択肢にあるが、いずれ町に帰りたい気持ちもある。もどかしい思いはいつしか、諦めの気持ちに変わった。11月20日、仮設とは違い家賃を払わなくてはならない復興公営住宅への入居を申し込んだが、生活再建への第一歩だとは考えていない。「支援を受けながら命が枯れるのを待つだけの日々が、今後も続く」

 仮設入居当初、買い物や温泉入浴のためのバスの運行を町に求め、いずれも実現した。「行政の命令で避難しているのだから、お願いするのは当然の権利」と。支援に頼らない「自立」を避難者に促す政策を、政府が進めているのは知っている。「『自立』とは何を指すのか。働くことか。行政の言うことはいつも曖昧だ」。男性は戸惑う。

 避難生活の長期化で

 「『自分は悪くないのに一方的に避難させられた。だから行政、東電には何でもしてもらう』。避難生活があまりにも長期化したせいで、こうした意識を持つ町民が多くなったと感じる」。避難指示解除後も多くの人が町外で避難生活を送る楢葉町。町社会福祉協議会事務局長の松本和也(62)は、町民の「避難者意識」の高まりを懸念している。

 「トイレが詰まったから来てくれ」「冷蔵庫の氷ができない」。原発事故後、避難者から要求がある度、町職員が仮設に出向いて対応したことを松本は思い出す。避難者からは、ことあるごとに「好きで避難してるんじゃねえ」と言われた。

 県社会福祉協議会は昨年4月、仮設などを巡回する生活支援相談員に避難者の現状を尋ねた報告書をまとめた。仮設避難者の今後の自立生活を困難にする要素を聞いた設問(複数回答)で「支援慣れによる自立意識の低下」を挙げた相談員は全体の42.7%に上り、「先が見通せない状況」(45.4%)に次いで多かった。

 「来年もただかい?」。相双の社会福祉協議会で避難者支援に当たる担当者(41)の元には年度後半になると毎年、医療費免除、高速道路無料といった支援制度が継続するかどうか、避難者から質問が相次ぐ。賠償金で生活している避難者は「東電の(賠償)、次はいつ入るんだ?」と聞いてくる。

 いつ地元に帰れるのかなど、先が見えない不安が避難者の自立を難しくしていることは理解している。ただ、こうも感じる。「支援制度も賠償も、終わりがはっきり示されれば、みんな前を向けるのに」(文中敬称略)

 (2015年11月29日付掲載)