【復興の道標・ゆがみの構図-2】悩ます「意識高い系」 「押し付け」に困惑

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 「『福島の問題は日本そのものの問題。県民は解決のために立ち上がるべきだ』と期待を押し付けるのは、もうやめよう」。精神科医の堀有伸(43)は反省を込めて語る。

 うつ病患者の診療などを通じ、欧米と異なる日本社会の特質に関心を持つようになった。個人が集団の中に埋没して「お上に従い」、それぞれが考えることをしない傾向が強いという点などだ。原発への姿勢は、まさにそれだった。

 「日本人の弱点を突く出来事だ」。国民のほとんどが信じ切っていた「安全神話」を崩壊させた東京電力福島第1原発事故をそう捉え、2012(平成24)年4月、東京の大学病院を辞めて南相馬市の病院で働き始めた。「『原子力ムラを打倒したい』と無意識に考えていたかもしれない」

 被災地ではしばしば戸惑いを感じた。NPOを組織して災害精神医学の勉強会などに取り組んだが、住民の関心は低調だった。逆に人気を集めたのはラジオ体操。高い理念の活動ほどうまくいかず、地味なものほど信頼された。次第に、自分が住民に過剰な期待を押し付けていると考えるようになった。

 原発事故などの問題を何とかしたいと考える県外の人が、その共通認識を県民に求め、「福島県民にこそ問題解決に取り組んでもらいたい」と望む構図に気付いた。「原発事故の極悪非道さを強調すれば県民は立ち上がると考え、『ここに住んでいたら必ず健康被害が出る』などと外からのメッセージを送るのも、同じ構図だろう」

 「東京電力や政府に、福島県民はもっと怒るべきだ」。社会問題への意識の高い人が県外から発するそうしたメッセージは、時として県民を困惑させてきた。

 「適正な賠償を要求することは必要だが、だからといって東電を糾弾しているだけではどうしようもない」。福島大うつくしまふくしま未来支援センターで復興支援に当たる同大教授の初沢敏生(54)は、原発事故で表面化した県民が抱える課題は国や東電だけで解決できる単純な問題ではないことを、外部の人に知ってほしいと考える。「『福島の問題は特殊』と県外の人は考えがちだが、実際に直面しているのは少子高齢化や人材の流出など、各地が抱える悩みと変わらない」

 堀は4月、「ほりメンタルクリニック」を南相馬市鹿島区に開院する。「原発事故という『日常を超えて起きた出来事』に対峙(たいじ)していると考えると、人は傲慢(ごうまん)になる。これからは一人の大人として地域社会への役割を果たすことに専念したい」(文中敬称略)

 (2016年2月1日付掲載)

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