【復興の道標・ゆがみの構図-4】漁協に一方的な中傷 現状を伝え続ける

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 「海を汚すんか」「まだ魚を取るつもりなんか」。受話器の向こうから、まくし立てるような関西弁の怒声が聞こえる。汚染水漏れ、サブドレン運用開始...。相馬双葉漁協岩子事務所(相馬市)には、東京電力福島第1原発の廃炉作業に関して本県沖の漁業に関するニュースが取り上げられるたび、県外から、県漁連の運営方針などを中傷する電話がかかってくる。

 「一番頭にきたのは『賠償をもらいたくて福島に住んでいるんだろ』と言われた時かな」。岩子事務所で「クレーム」に応対する同漁協参事の阿部庄一(60)は、浴びせられた言葉を忘れない。時には憤りながらも、本県漁業環境の回復状況などを根気よく説明するのだが、相手は原発問題や放射線に関する持論を一方的に述べ、聞く耳を持たない。

 試験操業をめぐって県漁連は先月下旬、操業できる海域として新たに第1原発の半径10~20キロ圏の海域を追加する案を示した。岩子事務所にもまた批判する電話がかかってくるかもしれないが、阿部は"長期戦"を覚悟する。「今できるのは、本格的な操業再開を見据えて魚の安全性を周知していくことが全てだ」

 いわき市小名浜を拠点に活動する市民団体「うみラボ」は2013(平成25)年から、同市のアクアマリンふくしまなどと連携しながら、ブログやツイッターなどインターネット上の各種ツールを駆使し、第1原発周辺海域の水質や魚介類の放射性物質の検出結果を公表する活動を続ける。「データの信ぴょう性に加え、数字の意味が分からず、不安があった」。主宰者の一人、自営業小松理虔(りけん)(36)にとって、東電や県が公表したデータに関する不信感が活動を始めたきっかけだった。

 「どうしようもない、ほどではない」。取れた魚から検出された放射性物質の数値に初めて触れた時の小松の正直な思いだ。基準値を大きく下回る数値を目の当たりにし、現状を発信することへの意欲は大きくなった。反響は大きかった。14~15年の検査結果を検証する記事には、60万を超える閲覧回数がカウントされた。「伝え続けることが重要なんだ」。偽りのない数字が背中を押した。

 小松が伝えたいことは「福島の海の安全」ではない。「現状を伝え、見てくれたそれぞれの人に、考えてほしい」。うみラボの検査結果から、ネット上で考え方の異なる者同士が言い争うこともあり、時には罵詈(ばり)雑言を受けるときもある。それでもブログの更新はやめない。「自分たちの言葉で伝え続けたい」。小松は仲間と共に、自分たちのやり方で風評被害に向き合う。(文中敬称略)

 (2016年2月3日付掲載)

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