「ゆがみの構図」編へ識者の意見【番外編 下】富田愛さん・ビーンズふくしま・みんなの家@ふくしま事業長

 
富田愛さん

 ◆富田愛さん(自主避難者を継続支援)

 どんな選択も尊重を

 東日本大震災からまもなく丸5年になるが、自主避難者の選択の難しさは、時がたつほど深まっているように思う。親の仕事や子どもの進学など、それぞれの家庭で事情が異なってきているためだ。

 自主避難者一人一人と話をすると「日々の生活をどう乗り越えていくか」に一生懸命な人がほとんど。家族のことを第一に考えている人が多い。帰還するか、避難を続けるかは一人の親が抱え込むには大きすぎる問題だ。ある母親は「いっそ誰かが決めてくれれば」と言っていた。だからどんな選択をしても、それを尊重することが大切だ。

 「帰還する人」「避難を続ける人」「不安を抱えながら福島で生活する人」それぞれの人の思いと向き合っていく必要がある。子育てするママは賢い。寄り添って支えてくれる人がいれば、悲観だけでなく、福島ならではの子育ての知見が集まるのではないか。

 来年3月、自主避難者への住宅補助が打ち切られるが、これに対しては冷静な受け止めが多い。不安を抱えながらも、経済的な理由で帰還せざるを得ないという人も出てくる。それぞれが生活再建できるよう支援を続けていく必要がある。

 (2016年2月16日付掲載)