【復興の道標・不信の連鎖-4】役場が「遠くなった」 「データブック」作製

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飯舘村の現状や村民の意識などをまとめたデータブック

 「横山君、これはおかしいべ」。全村避難が続く飯舘村が福島市飯野町に置く村出張所。2014(平成26)年3月まで村職員を務めた横山秀人(46)は出張所で、村内の除染や避難指示解除後の帰還を巡る方針に対する村民の苦情を、度々受けてきた。

 約20年間、村職員を務めた横山。原発事故を境に「村の施策が、自分たちが知らないところで勝手に進められている」と不信を抱く村民が増えたと実感する。村民が県内外に避難している影響が大きいと考える。「事故前だったら村内で住民が村議と偶然顔を合わすこともあったし、地区の会合も定期的に開かれていた。村が進める政策についての情報共有が容易だったコミュニティーが、避難によって失われてしまった」

 村出身以外の職員が増えたという事情もある。以前は村民が役場に電話をかければ、お互いに相手の顔が思い浮かんだ。「村民にとって、役場は物理的にも心情的にも、遠い存在になってしまった」

 震災と原発事故から6年目に入り、避難指示解除後の帰還に向けた市町村レベルの議論が活発化している。飯舘村も来年3月の避難指示解除を目指す村独自の方針を発表した。帰還の取り組みを政府ではなく村が自主的に進めたいという思いがあり、避難がさらに長引くことで帰還意欲が低下することを考慮したとみられる。

 南相馬市の借り上げ住宅で避難生活を送る無職男性(66)は、そんな村の方針に疑問を抱く一人だ。「村に戻って農作物を作っても売れる保証はない。解除されても村に戻ることは難しいのではないか」。村が今後開く説明会では、自分の考えをぶつけるつもりだ。

 「建設的な議論が必要だが、前提となる信頼関係が揺らいでいる。まずは議論のたたき台となるデータが必要だ」。個人的な理由で2年前に役場を辞めた横山だが、そんな問題意識から他の復興支援の団体と協力、今度は民間の立場から村に関する情報をできるだけ分かりやすくまとめた「データブック」を作った。

 避難している村民の帰村意識の推移や放射線量の現状に加え、村内の就農人口が原発事故前から減少傾向にあったことを示すデータも盛り込んだ。今後の村づくりについて、村民と役場が「現実的な観点で語り合うべき」との思いからだ。

 横山は言う。「営農再開や放射線の問題など、一つ一つの問題を個別に議論する必要がある。感情的な意見の応酬で終わっては、意味がない」(文中敬称略)