【復興の道標・復興バブル後-1】除染の仕事...先細り 転職の「受け皿」課題

 
配管加工の訓練に取り組む受講者。元除染作業員が再就職を目指して受講するケースもある=福島市・ポリテクセンター福島

 25兆円を超える復興予算などを背景にこの5年、県内の一部業界には「復興特需」ともいえる状況が続いた。震災、原発事故から6年目に入った今、状況の変化への対応を求められている県民がいる。顕在化し始めた「復興バブル後」を追う。

 「ずっと続く仕事ではないんだ」。除染作業員として働いていた郡山市の男性(29)の心の中には、そんな思いが常にあった。

 男性は福島市出身。震災、原発事故後に転職を考えた際、除染作業が目に留まった。「未経験でも大丈夫。働きながら資格を取ることもできるし、何より給料がいい」。郡山市に引っ越した2012(平成24)年春から、除染を手掛ける会社で働き始めた。

 高校ではテニス部に所属していた。体を動かすことが好きだった。除染作業では当初、筋肉痛に悩まされたが、3カ月もすると慣れた。会社の同僚は青森や沖縄など県外から来ていた年上の作業員ばかり。口調は荒っぽいが面倒見は良く、仕事に楽しさも感じていた。

 その一方で「別の仕事に就くきっかけを探していた」と振り返る。「除染はいずれ終わる仕事」と思ったからだ。

 水道設備の仕事をした経験のある同僚の話を聞いて興味が湧き、転職を決意。14年5月に会社を辞めた。世話になった親方は最後にこう言った。「席は空けとく。次の仕事が自分に合わないと思ったら、戻ってこいよ」

 厚生労働省所管の独立行政法人が運営する福島職業能力開発促進センター(ポリテクセンター福島、福島市)の住宅電気・配管設備施工科に入り、訓練を受けながら再就職を目指した。

 復旧・復興関連の事業は県内景気を下支えしてきたが、その動きに陰りも見え始めた。日銀福島支店によると、県内の公共工事請負金額は高水準ながらも減少傾向にある。同支店は「復旧・復興需要のピークが過ぎたことによる県内景気への影響について、引き続き注意深くみていく必要がある」と指摘する。

 雇用情勢も変化している。福島労働局の4月の発表によると本県の3月時点の有効求人倍率(季節調整値)は1.37倍で、前月を3カ月連続下回った。復旧や復興関連の求人が引き続き高い水準を示す一方、目立ってきたのは除染の求人の減少だ。県内ハローワークでの除染の新規求人数は昨年度6496人で、14年度の9435人から大幅に減った。

 除染作業員はピーク時に3万5000人を超えたとみられる。除染の仕事が減り、県内で働く場が少なくなれば、働き手の県外流出も予想される。ポリテクセンター福島の訓練課長水嶋克典(52)は「除染を辞め、手に職を付けて安定した仕事に再就職しようと訓練を受けに来る人がいる。今後さらに増えるだろう」と話し、作業員らの「受け皿」として役割を果たす意義を語る。

 「住宅に配管を設置すれば、手掛けた仕事がずっと形として残る。除染とは違うな」。郡山市の男性が昨年3月に住宅の水道配管設備などを手掛ける会社に就職して1年以上が過ぎた。

 週末出勤があり、緊急事態が起きればすぐに現場に駆け付けなければならない。「除染作業よりきつい仕事」と感じる。

 だが、やりがいも大きい。「長くこの仕事を続けたい」。除染の会社の親方には頼らなくても済みそうだ。(文中敬称略)