「復興バブル後」編へ識者の意見【番外編 上】鈴木禎夫氏・福島県不動産鑑定士協理事
◆鈴木 禎夫氏(公示地価評価に関わった)
新産業成長、経済の鍵
今年の公示地価で、本県の住宅地の上昇率は2年連続で日本一だった。避難者の住宅需要がいまだ高いことに加え、25兆円の復興予算を背景とした「復興特需」が地価を押し上げる一因となっている。
注意すべきなのは、地価が上がっているのは都市部や中通りの都市部に近い市町村だけだということ。全国的に緩やかに進んでいる周辺部から都市部への人口移動が、本県ではこの5年間、原発事故の避難などに伴い急激に進行した。ある行政担当者は「パンドラの箱が開いた」と表現したが、都市部以外の地域で過疎がより深刻化するだろう。
長期的に見て、今後は地価が下落していくのは間違いない。下落を防ぐには、人口を増やすか経済を活性化させるしかない。しかし人口増が期待できない今、経済を何とかするしかない。
阪神大震災でも同様に復興特需があったが、それが終わった5年後ごろから景気は低迷していった。県や政府が再生可能エネルギーや医療機器分野などの新産業の創出に力を入れているのは、阪神のケースに対する反省なのだろう。新たな産業が成長するかどうかが「特需」後の県内経済の活性化への鍵を握る。
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