【復興の道標・名なしの土地-下】抜本的解決策示されず 法改正含め見直し必要

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避難区域では営農再開が進まない。「所有者不明」の問題は農地集約でも課題になると指摘されている

 「強制的に収用するなんて言われたら、納得する地権者がいるはずない」。中間貯蔵施設の候補地に土地を持つ男性(67)は憤る。

 県内では中間貯蔵施設建設以外の、相双地方の復旧事業の一部で自治体が土地を取得する土地収用の手続きが進んでいる。

 「(強制力を伴う)土地収用は、取得の努力を尽くした上で、本当にやむを得ない場合の手段。地権者に丁寧に計画を説明し、理解を得るしかない」。県富岡土木事務所で事業を担当する次長の唐橋薫(47)は、額の汗をぬぐった。

 各地で表面化する「土地所有者不明」問題の解決に向け、国は被災地で土地収用制度のスピードアップや財産管理制度の手続き簡略化などの特例を認めてきた。しかし県内で制度の活用は進んでいない。

 用地取得の「奥の手」とされる土地収用は、公共用地の買収などで土地の権利を強制的に取得する制度だ。一方で個人の財産権に踏み込むため、これらの制度には収用委員会や裁判所の同意など、乱用を防ぐ措置も設けられている。ただ、手続きを進めるには土地所有者がいるかどうかや権利関係を調べる必要があり、持ち主が分からない土地に対しては有効な手段ではないとも指摘されている。

 唐橋も「あくまで地権者から任意で土地を提供してもらうことが大前提」と話す。中間貯蔵施設のような「迷惑施設」の場合は、なおさら慎重な対応が求められる。

 避難区域を中心に問題化している所有者不明の土地。自治体などの声を受け国土交通省も対応にようやく乗りだし、3月には新たなガイドラインをまとめた。しかし、そこには現行制度下で利用可能な方策が列挙されたのみで、抜本的な解決策は示されなかった。

 「今の制度では外部専門家の活用や手続きを一つ一つ改善することで円滑化するしかない」。土地問題の第一人者で、国交省の検討会の委員長も務めた早稲田大大学院法務研究科教授の山野目章夫(57)=福島市出身=は、土地所有者不明の問題改善について提言する。例えば、市町村が相続登記の専門家である司法書士を活用しやすくする仕組みや、調査に必要な個人情報の取得手続きの迅速化などだ。

 復興に向けた過程で明らかになった「所有者不明の土地」は、相続登記の仕組みなど現行の土地所有制度が変わらない限り、増加する見通しだ。今後、別な大規模災害の復興や耕作放棄地の集約など、さまざまな場面で問題となる可能性もある。山野目は「抜本的な問題解決には、法改正も含めた制度そのものの見直しが必要だ」と力を込めた。(文中敬称略)