【復興の道標・5年の歴史-6】第2原発、存廃棚上げ 黒字経営が至上命令

 

 「稼働できるが、廃炉を(求めると)決めた。巨大な産業を失うことになる。きれいごとでなく、新たな産業で他市町村との競争を勝ち抜かないといけない」。停止中の東京電力福島第2原発が立地する楢葉町。6月議会一般質問で町議の宇佐見雅夫(60)は、原発に代わる新たな地域産業をつくる必要性を訴えた。

 町に入る約12億円の固定資産税のうち、原発立地に伴う税収は8割超。立地に絡む国や県からの交付金も約10億円に上る。昨年9月の避難指示解除で、本格的な復興へ走りだした町にとって「生命線」ともいえる貴重な財源だ。

 町は北部を「新産業ゾーン」と位置付け、廃炉やロボット、先進的なリサイクル産業を誘致する構想を掲げる。ただ、実現には息の長い取り組みが求められ「稼働の有無にかかわらず、財政面で原発よりインパクトのあるものはない」(町幹部)のが現状だ。

 「県民の強い思いとして、廃炉を申し続ける」。知事の内堀雅雄(52)は9日、霞が関で、廃炉を国の責任で決断するよう迫った。県議会が2011(平成23)年10月に県内原発全10基の廃炉を求めることを決議して以来、県は立地町を含む「県民の総意」として、国と東電に廃炉を繰り返し求めてきた。だが依然として第2原発の扱いは決まっておらず、棚上げ状態だ。

 存廃を決めるのは誰か。第1原発については事故の被害が深刻な1~4号機に加え、5、6号機も首相の安倍晋三(61)の要請で東電が廃炉を受け入れた経緯から、国主導で廃炉を巡る議論が進むと期待された。しかし昨年、政府が「第1原発は法律に基づく特例」との公式見解をまとめたため、最終判断は東電に委ねられる公算となった。

 電力小売りの全面自由化で競争時代に突入し、実質的に国有化されている東電にとって黒字経営が至上命令だ。利益を生むあてのない第2原発には、第1原発の関係者と合わせて1日約1700人が出入りする。経営にマイナスだが、だからといってやすやすと廃炉には踏み切れない。

 国が会計規則を見直し、廃炉に伴う損失を単年度に一括計上しなくてよくなったが、それでも経営への大打撃は避けられない。「第1原発の廃炉作業のために経営資源を最大限投入している」。東電幹部は、第2原発の存廃を決める余力がない内情を漏らす。

 「『原発がもう動くことはない』と信じているから戻ってきた」。楢葉町で自宅のギャラリーを再開した大和田はるみ(65)は語る。むしろ、第1原発の廃炉に携わる作業員宿舎が町内に乱立することを心配する。「町の状況が変化し、ここに一生住めるのか。気持ちが揺れ動く」。廃炉と向き合う新たな町の姿をどう描くか、手探りが続く。(文中敬称略)