【復興の道標・5年の歴史-7】「日本一健康」自慢して 福島県に負のイメージ

 

 「全国に発信する絶好の機会なのに」。農林水産省などの主催で6月11、12の両日に郡山市で開かれた食育推進全国大会。来場していた小児科医で郡山ペップ子育てネットワーク理事長の菊池信太郎(45)は、もどかしさを感じていた。

 全国からの参加者に県産品の魅力が盛んに紹介される一方、正しい食生活など、健康を目指した本県の取り組みを県内外に発信しようとの企画が少ないと感じたからだ。

 震災後、放射線への不安から、子どもたちの外遊びが一時制限され、後に体力・運動能力の低下や肥満など健康を巡る問題につながった。郡山市の屋内遊び場「ペップキッズこおりやま」を運営する郡山ペップ子育てネットワークなどはこれまで、子どもの運動不足解消に向けた取り組みを進めてきた。

 原発事故から5年。子どもの健康問題に対する県民の関心が薄れてきたことを、菊池は懸念する。「子どもの運動不足、肥満は実は全国的な課題だ。県民は原発事故をきっかけに、子どもにとって外遊びがいかに重要かを知ることになった。この『気付き』をきっかけに、毎日の食事や運動など生活習慣の改善に県民総ぐるみで取り組み、『子どもたちが日本一健康な県』を目指すべきだ」

 そう考える背景には、県外の一部の人が本県に抱く「マイナスイメージ」がある。5年たった今でも放射線の影響を巡り、「福島=危険」などと本県に対して実態と違う印象を持つ県外の人は存在する。

 菊池は「子どもたちは将来、『福島県出身です』と言った際、県外の人がどう思うのか不安になるかもしれない。『日本一健康』との印象が広まれば、そんな心配はなくなる」と思いを語る。

 県外からの「負の印象」への対応策は、学校現場でも進む。三春町に仮設校舎を置く富岡一中の校長阿部洋己(51)は、単なる科学の知識としての理解では不十分と考え、食育や人権教育も関連させながら放射線教育に取り組む。「子どもたちは将来、進学や就職で県外に出た時、放射線を巡ってさまざまな意見にさらされることがあるだろう。その時、放射線の正しい知識を自ら説明できる能力を身に付けてもらうことが、現在取り組んでいる放射線教育の目的の一つだ」と強調する。

 子どもたちに対し菊池は、福島で育ったことに自信を持って生きてほしいと願っている。「『福島では昔、原発事故があったらしいけど、私たちは日本一健康なんだ』と、いつか自慢してほしい」(文中敬称略)