南相馬・小高病院、18日から遠隔診療 帰還住民の医療不安解消へ

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遠隔診療のイメージ

 南相馬市立小高病院は18日、小高区に帰還した住民などを対象にした遠隔診療システム(オンライン診療)の運用を始める。住民に情報通信技術(ICT)で病院と結んだタブレット端末を配布、生活習慣病などについて自宅に居ながら受診できる仕組みをつくる。

 避難指示が解除された小高区に早期帰還した人の医療不安解消を進めるほか、医師の往診など負担軽減にもつなげる。

 県によると、オンライン診療の取り組みは県内でほかに例がなく「先進的な取り組みで、今後注目したい」(地域医療課)としている。

 昨年7月に東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除された小高区では医師や看護師の数など震災前の医療環境を回復できない状況にある。

 帰還者の半数以上が高齢者で医療環境に不安を抱えている人も多く、市や病院が経済産業省などに支援を要請。医療系ベンチャー企業のメドレー(東京都、豊田剛一郎社長)が持つ技術を活用したシステム構築を検討してきた。

 遠隔診療の対象は、病院を日常的に訪れる患者のうち、医師がオンライン診療で対応できるかどうかを診察し判断。住民はタブレットを通じて医師に健康状態などを伝えるが、操作に不慣れな人もいることを考慮し、運用当初は住民宅に看護師や事務職員を派遣、住民と一緒に端末を操作するなどサポートする。

 タブレット配布には通信大手のKDDI(東京都)が協力する方向だ。

◆制度改正の可能性も   

 政府内には、オンライン診療を南相馬市以外の被災地や医療過疎地への展開を図る動きがある。

 現在、オンライン診療は対面診療ほどの優遇制度はないため、小高病院での運用で実績が証明されれば制度改正の議論につながる可能性もある。

 ICTを活用した医療を巡っては、県が昨年11月から県北で、救急車や病院にタブレット端末を配備して救急搬送の迅速化を図る取り組みを始めている。