解散目立つ避難先の自治組織 福島・飯舘、求められる交流の場

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 東京電力福島第1原発事故で全村避難を強いられた飯舘村民が避難先ごとに結成した18の自治組織が今春八つにまで減る見込みとなった。

 村民が各避難先で新たな生活を始めることが大きな要因だが、長引く避難生活で共に支え合った村民にとって自治組織は「第2のコミュニティー」。解散後のつながりの場の確保や、特に仮設住宅などに残る高齢者世帯への総合的なケアが喫緊の課題として浮かび上がってきた。

 「ほとんどが高齢者で若い人が少なくなった」。福島市の松川第2仮設住宅に暮らす女性(83)は長期化する避難生活での周囲の変化を口にする。

 同仮設住宅でも市内に新居を構えるなどして退去した村民は多い。それでも、同仮設住宅では交流の場をなくさないために自治組織は解散しないという。

 自治組織は、原発事故で県内各地の仮設住宅や借り上げ住宅に避難した村民らが村と連絡を取り合い、組織内でも交流できるように各地で結成された。

 役割は避難者の生活支援や物資の配布、交流イベントの開催、高齢者世帯の見回りなど多岐にわたり、村民の孤立やふさぎ込みの防止に効果を果たした。

 村によると、長引く避難生活で避難先の地域にそのまま家を新築するなど、「村に戻らない選択」をする村民が増え、各組織の会員は徐々に減少。既に解散している1組織のほか、今春には計9組織が解散の意向という。仮設住宅ごとにつくる六つの自治組織も役員が抜けるなど、半数は解散する見通しとなったという。

 村は、自治組織の解散を「避難村民が希望を持って一歩前に踏み出した証拠で新たなステップ」とプラスに評価する。一方で、震災でバラバラになった村内のつながりを「第1のコミュニティー」とすれば、避難先でのつながりはいわば「第2のコミュニティー」。自治組織の解散でそれが失われることへの不安や、仮設住宅などで多く見られた住民同士の見守り、助け合いの場の減少に対する懸念も残る。

 64世帯97人が暮らす松川第1仮設では今春、大多数が退去の見込みだ。自治組織も解散の見通しという。自身も退去を予定する自治組織役員の80代男性は「仮設住宅がなくなる最後までチームで頑張りたかったが、村に戻ってやりたいことがある」と複雑な心境を明かす。

 飯舘村の自治組織連絡協議会の会長の男性(71)=川俣町に避難=は「解散後に残った人が、孤立することになりやしないか不安だ」とした。

 村は対策として、解散した自治組織の会員が集まる「同窓会」を開く場合の開催費の補助制度を導入し、つながりの確保を図る。松川第1仮設には今春、村の出先機関を設け、寄り添った支援を展開するつもりだ。

 菅野典雄村長は「解散した自治体への支援はもちろん、残された人のフォローも行い、一人一人が自立できる手助けをする」と力を込めた。