処理水処分5方法 福島第1原発、30日から初の公聴会

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 東京電力福島第1原発から出た汚染水で浄化後に残る放射性物質トリチウムを含む処理水の処分方法を検討している国の小委員会は30、31日、富岡町、郡山市などで国民の意見を聞く初の公聴会を開く。

 国の作業部会がまとめた報告書では、処分方法として〈1〉海洋放出〈2〉水蒸気放出〈3〉地層注入〈4〉水素(トリチウムを含む)に変化させて大気放出〈5〉セメントなどで固めて地下に埋設―が提示されている。

 試算では海洋放出が最も短期間に低コストで処分できるが、漁業者の風評への懸念は強い。トリチウムの分離技術については、実証事業の結果、直ちに実用化できる段階にある技術は確認されなかったとしている。

【海洋放出】希釈し、安全確保した上で海に放出する。海の近くに取水ピットを設置し、水をくみ上げて濃度を薄める。希釈する倍率によって水の確保方法が変わる可能性もある。処分期間は4年4カ月~7年4カ月で費用は17億~34億円。

【水蒸気放出】前処理なしで蒸発処理し、トリチウムを含む水蒸気を蒸発装置に送り、高さ約60メートルの排気筒から高温水蒸気として大気に放出する。スリーマイル島原発(米国)でトリチウムの含まれる水をボイラーで蒸発させた実績がある。処分期間は6年3カ月~9年7カ月で費用は227億~349億円。

【地層注入】パイプラインで地下2500メートルの地層に注入する。前処理なしの場合、処分期間は5年9カ月~8年6カ月で費用は177億~180億円。38~76年の監視が必要だが、長期的なモニタリング方法は確立されていない。希釈した場合の処分期間は7年2カ月~13年で費用は501億~3976億円。

【水素放出】前処理なしで水素と酸素に電気分解し、発生した水素ガスを大気に放出する。電気分解の前処理工程で2次廃棄物として不溶物が発生する可能性がある。処分期間は5年8カ月~8年5カ月で費用は600億~1千億円。

【地下埋設】前処理なしでセメントなどを混ぜて固形化し、コンクリートの区画内に安全性を確保した上で地下に埋設する。処分期間は5年2カ月~8年2カ月で費用は1219億~2533億円。38~76年の監視期間が必要となる。

◆2日間で44個人・団体が意見

公聴会は30日に富岡町、31日に郡山市と東京都で開かれる。主催する国の小委員会は、これまで検討してきた海洋放出のほか、地層注入や水蒸気放出などの処分方法を説明する。2日間で44個人・団体が意見を述べる。各会場ともインターネットで中継される。