二瓶社長「被害、悪化している」 諦めず、地道に安全訴え

 
二瓶社長「被害、悪化している」 諦めず、地道に安全訴え

商品管理の徹底を図りながら、新商品開発など風評被害払拭への道を探る二瓶社長

 「今年に入り風評被害はさらにひどい。だんだん悪化していると感じる」と会津中央乳業(会津坂下町)の二瓶孝也社長(67)は嘆く。要因の一つに東京電力福島第1原発での度重なる汚染水漏えいなどのトラブルを挙げ、「悪い情報は県外の人にあっという間に広がる。『やはり福島は...』という流れに引き戻される」と表情を曇らせる。

 震災直後に流通が止まった時も他県産の原乳を使い商品を供給していたことが奏功し、県内への出荷は徐々に回復、出荷量も増加傾向にある。しかし、主力のブランド商品「べこの乳」の県外での売り上げは依然として厳しい。

 震災前は首都圏での販売イベントなどにあまり参加しなかったが、震災後は商品流通の回復を目指して積極的に参加、商品の安全・安心を訴えてきた。しかし、取引先のスーパーやデパートなどの店舗数が増えても、出荷数は増えない。「県外で根強く取引が継続できているのは数えるほど」と現状は切実だ。

 大河ドラマ「八重の桜」や猛暑の影響で、本社工場売店への来客数は増加傾向にあり、売店の売り上げは1割ほど伸びたが、風評被害で落ち込んだ売り上げ分はカバーできない。二瓶社長は「風評被害の払拭(ふっしょく)には消費者の声が一番の力。福島の商品は安心して買えるという気持ちを消費者に広めていくことが大切」と感じている。

 県外での販路拡大、出荷量の回復に向けた懸命な取り組みは続く。「消費者の需要に合った商品を開発して起爆剤にするなど、諦めずに挑戦しながら地道に県産商品の安全、安心を訴え続ける」。二瓶社長は前を向いた。

 モモ、消費地で「温度差」

 本県特産のモモは今年、原発事故の影響で落ち込んでいた価格に持ち直しの動きが見られた。しかし、JA関係者が「消費地によって温度差がある」と指摘するように、風評被害は軽減しつつも依然として残る。

 主力品種の「あかつき」は一時、震災前並みの価格を回復。JA伊達みらい(伊達市)は、モモ全体の取引額が昨年より増加する見通しだ。担当者は他県の産地の出荷量が伸び悩み、本県産に人気が集まったと分析するが「風評はゼロではない」と話す。市場によって反応も異なるという。関東圏では安全性をPRすることが逆に風評を呼び起こす−という市場関係者の声もあり、震災前と同様に本県産の魅力をアピール。一方、北海道では安全性を丁寧に訴え、理解を求めている。