各町村の"思惑"絡まる 広野、楢葉、川内の開設3候補地

 
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震災前の楢葉町の文教地区。楢葉中(右下)校庭には現在、建設途中の新校舎がある=楢葉町提供、2006年撮影

 中高一貫校の開設は、双葉郡全体の将来像、各町村の復興の青写真に大きく関わるため、各町村の思惑が絡んで簡単には決まりそうにない。双葉郡南部の3町村はそれぞれに適地を想定しながら議論に臨む。

 広野町は、すでに帰還が始まり、学校も町内で再開して「安全」をアピールしやすい立場だ。担当者は「設置が決まった場合には、文教ゾーンの一角に、ある程度まとまった土地を準備できる」と話す。町は役場近くの高台を中心として文教施設を集中させるまちづくりを進めており、幼稚園や保育所、小中学校、児童館や体育館、グラウンドなどが徒歩圏内に整備されている。

 楢葉町は楢葉中、町総合グラウンドを活用できるよう選定を進めている。国道6号沿いで復興インターチェンジが設置予定の常磐道楢葉パーキングエリアからも近い。最寄りのJR竜田駅は来春運行再開予定だ。避難中の小、中学校の再開時期は、保護者の放射能への不安なども考慮して「慎重に検討」としてきた同町。中高一貫校も同様に、子ども、親が納得できる環境が必要になる。

 川内村は村中心部の空間放射線量が低く、住民の帰還が始まっていることから候補地となった。豊かな自然に囲まれた環境で伸び伸びと教育できることも特徴。村内では復旧作業や復興に向けた各種事業が進んでおり、村担当者は「建物から一歩外に出れば復興の現場を目にすることができ、大震災、原発事故からの復興の様子を感じ取れる」と話す。

 将来的には集約? サテライト校にも影響

 双葉郡の中高一貫校構想は、原発事故により避難先で授業を行うサテライト校の在り方にも影響を与える。県教委は「在校生がいる間は授業を続ける」と明言していて、来年度の入試も行う方針だが、多くのサテライト校が元の校舎に戻れる見通しが立たない中、県教委の中からも「生徒数の減少が続けば、将来的には集約の必要がある」という声が上がっている。

 中高一貫校がサテライト校集約の受け皿になり得るため、県教委幹部の一人は「サテライト校の在り方も合わせ検討せざるを得ない」としている。