町民の不安拭いきれず 「木質バイオマス発電」計画中止

 
町民の不安拭いきれず 「木質バイオマス発電」計画中止

木質バイオマス発電施設の建設予定地だった塙町東河内の民有林

 塙町は、町内に整備する予定だった木質バイオマス発電施設の建設計画を中止する方針を示した。計画をめぐっては、放射性物質による健康被害などを懸念する町民らが反対運動を展開。県は、県内の豊富な森林資源が生かせる木質バイオマス発電を積極的に進めたい考えだが、塙町の中止方針で、県内の導入計画に黄色信号がともる。

 塙町では、同発電施設の建設が「森林除染目的」と報道されたことで町民らによる反対運動が始まった。環境省が鮫川村で進める、放射性物質を含む稲わらなどを焼く仮設焼却施設の破損事故も追い打ちを掛け、町は建設の中止を判断せざるを得ない状況となった。

 「『除染』という言葉に負けた」。菊池基文町長は町民の不安を拭いきれなかったことに肩を落とす。中止方針の背景には、放射性廃棄物を処理する仮設焼却施設と類似の施設と見る住民が少なくないこともある。塙町の同発電施設では、放射性物質検査で放射性セシウム濃度が1キロ当たり100ベクレル以下の木材に限定して利用する計画。菊池町長は「似て非なるもの」と再生可能エネルギー推進のシンボルとして経済効果などに期待したが「原発事故による不信感もあった」と町民の心情を推し量る。

 町内の山林には伐採期を迎えた樹木も多く、災害時の安全面を考え、同発電施設の建設に賛成する町民がいる。一方、塙町木質バイオマス発電問題連絡会の吉田広明代表(57)は「一番の問題は健康被害。木材を燃やして放射性物質が放出しないとも言えない」と話した。反対派は、集じん装置の効果など安全対策に懐疑的な見方を示す。

 塙町木質バイオマス発電事業 塙町と県が天候に左右されず安定して発電できる利点に着目。事業者を誘致し、同町東河内字一本木に発電出力12メガワット(1万2000キロワット)の木質バイオマス発電施設を建設する計画。総事業費は約60億円で、約半分を県が国の交付金を活用した基金から事業者に補助する予定だった。林業、製材業などの活性化にもつながる事業として、本年度中の着工を目指していた。