「全員帰還」から転換 自公の復興3次提言、移住者手厚く

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「全員帰還」から転換 自公の復興3次提言、移住者手厚く

佐藤知事に3次提言を説明する大島本部長(左)=11月12日、県庁

 与党の自民、公明両党は本県復興の加速化に向けた第3次提言をまとめた。3次提言で注目されるのは、東京電力福島第1原発事故により高濃度の放射性物質に汚染された帰還困難区域を念頭に、住民が移住を選択した場合の支援策の強化を求めた点だ。

 政府は住民が判断するための材料として(1)除染による線量低減効果を踏まえた帰還見通し(2)移住先での住居再取得と、当面の生活資金を確保できる賠償の仕組み(3)避難元に近い場所での生活再建を求める場合の受け皿となる町外コミュニティーや復興拠点の整備--を示すべきとしている。一方、避難指示解除に伴う早期帰還を加速化するため、遅れている除染をインフラ復旧と一体化した公共事業としての実施、早期帰還者の生活を支援するための賠償を含めた措置、医療機関や商業施設の再生支援を打ち出した。

 除染で生じた土壌などを保管する中間貯蔵施設は「福島の復興にとって最重要かつ急務の課題」とし、地元理解を得た上での早期建設の必要性を強く指摘している。

 被災地の「本音」に踏み込む 

 与党が本県復興に特化した提言をまとめた背景には、震災から5年間とした「集中復興期間」の折り返し点を迎えても、原発事故で深刻な影響を受ける本県の復興が岩手、宮城両県と比べ進んでいない危機感がある。同時に、自民党東日本大震災復興加速化本部の大島理森本部長が「政府が言えない部分を言っている」と解説するように、「全避難者の帰還が難しい」という被災地に漂う「本音」に踏み込む意図があった。

 政府は国会答弁などで「全員帰還という方針を決めたことはない」とするが、住民の移住という選択肢を事実上認めた点では、提言は政府に政策転換を促す効果があった。県民の最大の不安要因である放射線量の基準などについては「場の線量」から「個人の線量」への切り替えや、リスクコミュニケーションの強化を求めたが、基準そのものの判断は政府に委ねた。

 また、第1原発の廃炉措置や除染について、東京電力任せにせず国が前面に立つ姿勢を強くするよう訴えたが、事故当事者で加害者でもある東電の責任の範囲については、今後の検討を促す内容にとどめた。党内には、公費を投入するなら東電の法的整理を求める声もあり、国の関与の前提として(1)東電の厳しい自己改革(2)経営者だけではない関係者を含めた東電全体が責任を果たすこと--の表現を加えた。提言をめぐる議論では、避難指示解除を踏まえた「双葉郡全体の将来像の明確化」が俎上(そじょう)に上がっていたが、提言ではその必要性の指摘にとどまり、課題として残された。

 県、避難者ニーズ調査へ 

 政府が与党提言を受け、避難住民の「全員帰還」の原則を転換する方向で検討入りし、県の避難者支援の在り方も新たな局面を迎えている。避難者が帰還を待つか、転居して新しい生活を選ぶのか--。県は全避難者の帰還を前提にするものの、帰還に対する個人の選択に対応する考えを打ち出し、提言は、県の避難者支援にも柔軟さを促す結果となった。

 佐藤雄平知事は11月、自民党の大島理森本部長から第3次提言の説明を受けた際に「将来的に帰還する方針はそのままだ」と避難者の「全員帰還」を前提に施策を推進する考えを重ねて強調した。ただ「(避難者に)丁寧に話を聞き、その話に合う政策を進めてほしい」とも述べ、帰還を望まない住民も含めた支援の必要性も指摘した。

 避難指示を受けた市町村では「戻らない」ことを選択する住民も目立ち始めている。帰還困難区域などでは除染が遅々として進まず、帰還できる環境に回復するまでの見通しは立っていない。こうした状況を受け県は来年1月、県内外への全避難者14万人超を対象に帰還への考え方などを聞く意向調査を初めて実施、支援に対するニーズを把握する。

 県幹部は「全員帰還が前提だ。ただ、避難生活が長期化し、避難者の帰還に対する考え方が変わってきているのも事実」と指摘する。