「帰りたくても帰れない」 移住決心、双葉から避難の男性

 
「帰りたくても帰れない」 移住決心、双葉から避難の男性

男性は「町に帰りたいが、帰還は難しい」と現状を明かし、移住を選択した

 「ふるさとに帰りたくても、原発事故のために帰れないというのが現実」。双葉町からいわき市に家族と避難する60代男性は福島第1原発の事故収束、古里再生が進まない現状への心情を明かした。

 男性は代々受け継いできた土地を原発事故で奪われた。事故前は、原発が隣接する集落の一人として、東京電力に対して万が一の事態への備えを訴えていたが、対策が実現しないまま、最悪の事態になった。

 「町に帰りたいという気持ちは当然ある。だが、正直帰還は難しいのかなとも思う」。男性は放射性物質の汚染が広がった古里の現実を直視して昨年秋、関東地方に一軒家を購入し、来春にも引っ越す予定だ。「県外ということで正直、抵抗はあった。だが、自分なりの考えで生きていくのも一つの復興かなと思った」と県外移住を決めた理由を語った。

 国は中間貯蔵施設の建設を町に打診する見通しだ。「最終処分場の進展もないまま、中間貯蔵施設予定地の買い上げの話も出ている。避難住民のことをどう思っているのか。一体誰を信じればよいのか」。男性の表情には長引く避難生活への疲れが浮かんだ。