年間積算被ばく線量「1ミリシーベルト以下」は堅持すべき

 

 政府は原発事故の復興指針で、年間の積算被ばく線量の長期目標を「1ミリシーベルト以下」に掲げた。ただ、国際放射線防護委員会(ICRP)の事故収束期の線量水準「1〜20ミリシーベルト」を踏まえた国の対応への理解浸透に努めるとも示し「1ミリシーベルトにこだわらない」風潮が広がる可能性をはらむ。

 こうした風潮に避難市町村も懸念を示す。本紙アンケートでは「1ミリシーベルトを堅持しなくてもよい」としたのは飯舘村だけ。半数を超える田村、川俣、楢葉、富岡、川内、双葉、浪江の7市町村が「堅持すべきだ」とした。原発事故後、政府が1ミリシーベルトを長期目標に掲げてきた中で、目標緩和は住民の混乱を招きかねないというのが多くの理由だ。

 1ミリシーベルトについて、楢葉町の松本幸英町長は「線量基準の変更は混乱を招く」と指摘。川内村の遠藤雄幸村長は「いまさら数値を変更しても住民が納得しない」、川俣町の伊藤智樹副町長は「年間20ミリシーベルトを下回れば安全とする考えは性急過ぎる」とくぎを刺した。

 「長期にわたっても除染し、(原発事故以前の)放射線量に限りなく戻すべきだ」。浪江町の馬場有町長は20ミリシーベルトを上限とする線量水準を盾に国が除染の取り組みを緩めることを懸念する。

 一方、1ミリシーベルトにこだわらないとする飯舘村の菅野典雄村長は「国際基準から見ても1ミリシーベルトは厳し過ぎる。弾力的に運用してもいいのでは」と話す。

 1ミリシーベルトの堅持についての是非を明言しなかった大熊町の渡辺利綱町長は「放射線の感受性は性別、年齢などで異なり、ある程度の幅を設定するのは妥当だ」としたが「20ミリシーベルトはICRPが定める被ばく線量上限で問題」と指摘した。