試験操業「突破口に」 いわきの八百板さん「活気づけたい」

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試験操業「突破口に」 いわきの八百板さん「活気づけたい」

 「魚で、まちを活気づけたいんだ」。いわき市の漁師八百板正平さん(80)は、同市沿岸の海域で3月にも始まるシラウオ漁の試験操業に向けて同市の母港・久之浜漁港に出向き、刺し網の手入れに余念がない。

 八百板さんは20歳で漁師になり、仕事場を太平洋として北はサケ・マス、南ではサバを漁獲した。北海道出身だが「汗を流して働けば日本どこでも歩ける」といい、北海道や岩手、宮城両県と魚の一大産地を転々とした。「ここの海が一番」。親潮と黒潮が交わる豊かな漁場にほれ込み、30代半ばでいわき市に居を移した。「ヒラガニは汁物にしたら最高。これだけのだしを出すカニは全国探しても見つからない」。以来、同市近海で刺し網漁を続けた。

 しかし震災が全てを変えた。八百板さんは沿岸部を襲った大津波から船を守るため「沖出し」をし、愛船正栄丸を海に進めた。船と自分の命は助かったが、その後は原発事故で海に出られない日々が訪れた。県が放射性物質検査を重ねて同市沿岸の魚でも安全性が確認され、ようやく出漁にこぎ着けることができた。

 「まちは船で成り立っていた」。八百板さんには忘れられない光景がある。震災前に開かれていた漁港まつりだ。久之浜地区の人口を超える多くの人が訪れ、地域全体がにぎわった。試験操業を「突破口にしたい」と意気込む八百板さん。かつてのにぎわいを取り戻すため再び海に船を出す。

 漁業再生へ期待 漁期は4月まで

 いわき沿岸で3月にも試験操業が始まる。同市の海岸から約10キロまでの海域で、4月までを漁期としてイシカワシラウオとコウナゴを対象に行われる。シラウオは刺し網漁、コウナゴは船引き網漁で実施。シラウオ漁は12隻、コウナゴ漁は45隻が出漁する予定だ。

 昨年10月に始まった沖合の底引き網漁に続き、東電福島第1原発の汚染水問題を考慮し見送られてきた沿岸海域でも試験操業ながら漁や出荷が再開されることで、いわき漁業の再生に期待が高まる。

 いわき市漁協と小名浜機船底曳網漁協の計画が1月24日の県下漁協組合長会で承認された。県の放射性物質検査などで魚介類の安全性を示せると判断された。

 県水産試験場の昨年の検査によると、水揚げされたイシカワシラウオの放射性セシウム濃度は最大で1キロ当たり8.1ベクレル、コウナゴは全ての検体で検出限界値未満。食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を大幅に下回っている。両漁協は2月に対象魚種の重点検査を行い、安全性を確認する。

 試験操業では、水揚げと同時に放射性物質検査が行われる。県漁連は国より厳しい50ベクレル以下を基準値として、基準をクリアした漁獲物だけを出荷する。いわき沿岸の試験操業でも同じ基準が適用され、安全性が確認されたものだけが市場に出回る。

 いわき沖合の試験操業で水揚げされた魚などは、主に県内の公設市場に出荷される。いわき仲買組合によると、震災前と同水準の価格で取引されている。一部は仙台市や水戸市の市場に運ばれ、他県産と同程度の価格となっている。