国と東電が体制強化、廃炉どう進む? 加速へ東電分社化

 
国と東電が体制強化、廃炉どう進む? 加速へ東電分社化

 汚染水問題を廃炉作業の大きな課題に抱え、早急な対策が求められている東京電力福島第1原発。対策の前面に立つ姿勢を示す政府と、実際に作業を進める東電は体制の強化を含めて廃炉と汚染水対策の一層の加速化を模索する。技術的、人的な課題が山積する中で実効性が伴う対策を実施できるかが焦点となる。

 東京電力福島第1原発は1月31日に5、6号機が廃炉となり、事故が起きた1〜4号機を含め全6基の廃炉が決まった。東電は第1原発の廃炉と汚染水対策を加速させるため、4月1日に社内分社化による「廃炉カンパニー」(仮称)を設置する。政府から1月に認定を受けた新たな総合特別事業計画(再建計画)に盛り込んだ。

 廃炉会社には、原子力部門で福島第1原発の廃炉作業に携わっている約1200人を移行させ、廃炉作業と汚染水対策に専従させる。廃炉・汚染水対策に必要な人材や資金について決める経営会議も置く。社外からも原子力の専門家を起用し、技術面で助言などを得ながら作業の迅速化につなげる。

 原賠機構改組、国が監視へ  

 政府は東京電力に賠償資金を交付する原子力損害賠償支援機構(原賠機構)を改組し、新たに東電福島第1原発の廃炉業務を担わせるための法案を今国会に提案する。機構を通じ廃炉業務を国が監視する体制を整える。

 機構は国と電力会社の出資で設立。国は機構を通じて東電に巨額の賠償資金を交付することで、東電を実質的に国有化している。新体制では、機構を「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」に改組。政府の廃炉・汚染水対策関係閣僚会議が廃炉の中長期的な方針を決定し、それに沿った対策の実施を東電に指示する。

 原賠機構が技術開発を担う国際廃炉研究開発機構の職員を受け入れることなども検討されている。ただ、賠償と廃炉の業務が一体化となることから、改組には自民党内から「国の役割をもっと明確にできないか」などの慎重論も出ている。

 地元の首長は期待と危機感

 東電福島第1原発が立地する大熊町の渡辺利綱町長は、政府が廃炉に積極関与する姿勢を示していることに期待を寄せる。廃炉を進めるための新たな技術開発により、ロボット産業の創出などが見込めるからだ。しかし「とにかく早くやらないと震災は風化する」とも述べ、期待と復興遅れへの危機感が入り交じる。

 廃炉作業は30〜40年かかるとみられるほか、溶け落ちた核燃料の取り出しなど過去に経験したことがない取り組みが進められる予定だ。渡辺町長は「世界の英知を結集する必要がある」と強調、その延長線上には新産業の創出を見据える。

 「産業が生まれれば、雇用の創出にもつながる」と期待し、その実現に向けて「スピード感を持って取り組んでもらいたい」と求める。