"福島ブランド"再生、生産者ら思い熱く 懸命の努力続ける

 

4年ぶりの水稲の作付けに向けてトラクターを点検する今野さん

 東京電力福島第1原発事故による放射性物質の拡散で大きな痛手を受けた県内農林水産業は、震災と原発事故から3年となる今も再生への挑戦が続く。生産農家や漁業関係者は、豊かな自然の恵みとともに育まれてきた「福島ブランド」を守るために懸命の努力を続け、日々汗を流す。放射性物質の吸収抑制対策や新たな技術の開発だけでなく、基準値を超える放射性物質を含む農林水産物を流通させないための検査体制の強化、風評被害の払拭(ふっしょく)など課題は多いが、安全で安心な食の提供に向けた歩みはさらに続いていく。

 南相馬の今野さん、4年ぶりコメ作付け

 南相馬市は今年から避難区域を除く地域で本格的に稲作を再開する。市は作付けする農家に10アール当たり2〜3万円を助成するが、作付けを自粛した場合に得られる賠償金を踏まえれば収入に大きな差はない。「それでもそろそろ前向きに動き始めないと」。南相馬市鹿島区の今野公雄さん(65)は、4年ぶりのコメ作りに向けて準備を進めている。

 今野さんは東京電力福島第1原発事故の後、地元の水利組合が活動を休止したため、これまで試験栽培すらできなかった。久しぶりのコメ作りは「うれしい半面、放射能のことは常に頭にある」と不安を吐露する。

 同市では昨年、一部の地域で取れたコメから食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えるセシウムが検出された。市内の農地除染は2月中旬に実施業者が決まったばかりで、まだ始まっていない。今野さんは「全袋検査で結果が出るまでを考えると気が重い」と、素直に打ち明ける。ただ「損得なしで自分のコメを食べられるのが醍醐味(だいごみ)」と、農家としての自負が顔をのぞかせる。4.5ヘクタールの農地は、6代前の先祖から受け継いだ宝物だ。「目の黒いうちは俺が守り抜くよ」。今野さんは言葉に力を込めた。