「試験操業」漁場拡大 魚種、検査、流通体制に厳しい条件

 
「試験操業」漁場拡大 魚種、検査、流通体制に厳しい条件

試験操業の魚介類を迎え、出荷作業に励む関係者=昨年10月、いわき市の小名浜漁港

 東京電力福島第1原発事故の影響で、本県沖での本格的な漁は事故後3年がたとうとする今も自粛に追い込まれたままだ。漁業関係者は水揚げする魚種や検査、流通体制に厳しい条件を課した試験操業で再開への道筋を懸命に探っている。

 試験操業は2012(平成24)年6月、相馬双葉漁協が先行して始めて以来、第1原発の汚染水漏れで一時中断、苦境に立たされながらも、対象魚種と海域を広げ、13年10月にはいわき地区の漁協も加わった。

 これまでは本県沖の水深135メートルより深い海域で底引き網漁、相馬沿岸では船引き網漁を実施、今月からいわき沿岸でも船引き網漁と刺し網漁が計画されている。これにより第1原発の半径20キロ圏を除いて、本県沿岸の全域にまで漁場が拡大される。

 全体で33の対象魚種は放射性物質検査を繰り返し、食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を安定的に下回る魚種だけを絞り込んできた。出荷前には各漁協が自主的に検査を行い、県漁連が統一した基準値以上であれば、県水産試験場で詳細な検査に回す仕組みをつくり上げた。

 先月27日に漁獲したユメカサゴ(ノドグロ)は試験操業としては初めて食品の基準値を超えたが、県漁連は直ちにユメカサゴの出荷自粛に踏み切り、基準値以下でも自主回収に入った。県は「過去に基準値を上回った例がない魚種だったが、現場で厳しい検査を徹底しているからこそ確実に網にかかり流通を防げた」(水産課)と評価する。