調査官「苦労を推測」 被災者と向き合う、公正中立な立場

 
調査官「苦労を推測」 被災者と向き合う、公正中立な立場

公平な和解と被災者の現実とのはざまで業務に当たる(左から)佐藤さん、宮崎さん、南波さん

 原発事故の損害賠償をめぐり、被災者と東京電力の和解を仲介する文部科学省の原子力損害賠償紛争解決センター。震災後、県内で司法修習生時代を過ごした弁護士の佐藤晃さん(34)、宮崎孝介さん(34)、南波耕治さん(28)の3人は同センターの調査官として、原発事故被災者と向き合う。

 3人は2011(平成23)年11月から10カ月間、福島市に住み「法の番人」としての経験を積んだ。当時は放射線の不安を抱えて生活する県民と接し、避難区域の南相馬市小高区で被災者から聞き取りも行った。「震災直後の福島にいたわけではない」と話すが「被害者の苦労をある程度は推測できる」と被災者をおもんぱかる。ただ、調査官は「公正中立的な立場でなければならない」とも認識。和解案の提示で「つらいと思うこともある」と明かす。

 調査官の業務は昨春から携わった。この1年で、避難区域の住民から土地や生活、全てを奪った原発事故の現状を知った。井戸水を使って震災前に生活していた人が、都市部に避難できる住まいを用意されても必ずしも「良い」とはならず、申し立てで実感したのは「人として何を大事にするのか。人それぞれに全く違う」ことだった。

 現時点の申し立ては精神的賠償、避難費用の賠償を求める人が多い印象だが、事故発生から3年を迎えて「生活再建の申し立てが増えていくのではないか」と見通す。「どのような損害があったのか。事故前の過去、現在の様子を聞き、迅速に進めたい」。3人は今後も相次ぐであろう申し立てに決意を新たにする。