福島第1原発、止まらぬ"トラブル" 人為ミス、改善されず

 

 東京電力福島第1原発は事故発生から丸3年を迎えようとしている現在も数々の難題を抱え、事故収束のめどは立っていない。廃炉が決まった1〜6号機のうち、4号機は昨年11月から使用済み核燃料プールからの燃料移送が始まったが、炉心溶融(メルトダウン)を起こした1〜3号機の溶融燃料の取り出し方法はまだ先が見えない。加えて、敷地内で増え続ける放射性物質を含んだ汚染水をめぐるトラブルなどが後を絶たず、廃炉に向けた道のりは険しいままだ。

 問われる「危機管理体制」

 福島第1原発では1〜6号機の全6基の廃炉が決まったが、いまだにトラブルが相次ぎ、廃炉作業の障壁となっている。特に今年に入ってからは再び重大な事故を招きかねない人為ミスが続き、東電の危機管理体制が依然として厳しく問われている。

 2月19日には汚染水を貯蔵する地上タンクの上部から、新たに汚染水約100トンの漏えいが発覚した。汚染水からはストロンチウム90などベータ線を出す放射性物質が1リットル当たり2億4000万ベクレルと高濃度で検出され、タンクを囲む堰(せき)の外に流出、土壌に染み込んだ。

 汚染水漏れ事故の発覚前には、タンクに設置された水位計が満水状態を知らせる警報を発していたが、東電は適切な対応を取っていなかった。警報作動時にタンク周囲を地上から点検した結果、東電は「水漏れなどの異常は見つからなかった」として、水位計の故障と判断。天板部分から実際に水位を確認するなど初歩的な対応を怠っていた。

 水漏れの直接的な原因は、タンクにつながる配管の弁が開いた状態で、当初は別のタンクに移送する計画だった汚染水が入り込んだため。タンクにつながる弁は3カ所あり、このうち1カ所は何者かが弁の操作を誤って開いた可能性がある。東電は社員や作業員を対象に調査を進めているが、特定には至っていない。残りの弁2カ所も時期は不明だが開いた状態だった。

 弁を開閉操作するレバーは配管付近に放置したまま管理しており、誰でも開閉操作できる環境だった。

 過剰電圧で温度計故障

 炉心溶融(メルトダウン)を起こした福島第1原発2号機では、2月中旬に原子炉圧力容器底部の温度を監視している温度計2個のうち1個が故障した。作業員が点検の際、誤って過剰に電圧をかけたことが故障の原因。同容器底部の温度監視は当面、温度計1個のみで監視することになる。

 東電は、温度計の点検マニュアルに電圧の数値を記載していなかった。故障した温度計は原発事故後に設置した新しい温度計で、事故前に設けた別の温度計と比べ、小さな電圧で点検できるのに大きな電圧をかけてしまった。東電は故障した温度計を交換する方針だが、現場は放射線量が高く時期は未定としている。