"双葉っ子"帰還促進 小・中学校、地元授業再開4校のみ

 

 原発事故の避難区域となった双葉郡の小、中学校は、事故から3年を迎える現在も10校が臨時休校を続ける。避難区域解除によって地元で授業再開した学校では、子どもの帰還の動きが見え始めた一方、避難先に移転して再開した学校では児童、生徒の減少に歯止めがかかっていない。

 郡内の小、中学校28校のうち、地元で授業を再開したのは、広野町、川内村の4校のみで、臨時休校の10校を除き、残る14校はいわき市や会津若松市、二本松市などそれぞれの避難先に移転、授業を続けている。

 12年9月に広野町での授業を再開した広野小。本年度当初に69人だった児童数は2月21日現在で75人に増加した。町教委によると、避難先からの転校が増えたことが要因という。今春は19人が入学を予定しており、子どもたちの帰還の動きが始まっている。

 ただ、郡内の大部分の小、中学校は震災前に比べて児童、生徒数が大幅に減少したまま。震災前の10年4月に558人が通っていた浪江町の浪江小は、避難先の二本松市で授業を再開したものの、児童数は19人にとどまる。双葉町が今年4月、いわき市で再開する小、中学校の入学希望者は児童、生徒いずれも10人に満たない。

 郡内には今春の入学予定者がいない学校もあるなど小、中学校は依然厳しい状況が続いており、子どもたちが安心して学べる教育環境の提供に向けた支援が引き続き求められている。

 進路が広範囲

 会津若松市に仮設校舎を置く大熊中。進路指導を担当する鈴木美和教諭によると、会津やいわき地方の中学校と、高校についての情報共有を図っているという。また、教諭が自らの人脈をたどるなどして進路関係の情報収集に当たっている。

 生徒の進学先が広範囲になっていることで、さまざまな影響がある。生徒たちが受験会場に向かう際の交通事故への心配をはじめ、教諭も受験の事務手続きで広範囲に動かなければならない。鈴木教諭は「進学先が広範囲になると、生徒同士、保護者同士で卒業後に離れ離れになることが多く、別れを惜しむ気持ちが強くなっている」と話す。

 少人数生かす

 三春町に仮校舎を置く富岡一、富岡二中は、生徒数が原発事故前と比べ、1割以下の計33人まで激減した。教師たちは逆境をバネに、少人数の利点を最大限に生かした授業や生活指導を展開している。

 生徒数は減ったが、一人一人の教師は、よりきめ細かに生徒と向き合えるようになった。授業では、習熟度に合わせた進行が可能になり、個別指導の形になっている学年もある。また、生徒と密接に関わることで、心の悩みなどに一層、目が届くようになった。一方で、専用の体育館がなく、スクールバスの関係で部活動ができないなど仮校舎ならではの悩みもある。両校は体力低下の防止に向け、放課後に体を動かす「SPタイム」を設けている。