コメ作付け"農家苦悩" 南相馬で本格再開、セシウム不安

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コメ作付け

鹿島区で4年ぶりに本格的な稲作を再開した村井さん。収穫への希望を語る一方、「原発に近い場所なら作らなかった」と本音を吐露する=南相馬市鹿島区

 東京電力福島第1原発事故に伴い全域で稲作の自粛が続いていた南相馬市では今年、避難区域を除いて本格的にコメ作りが始まった。しかし作付面積は約94ヘクタールにとどまり、市の目標(500ヘクタール)の2割にも満たない。背景には作付け時の収入が、市の補助金を加えても賠償額を下回るとの試算もあり、セシウムへの不安も拭えないままだ。

 同市では昨年、流通を前提にした実証栽培が行われた。農家には作付けの有無にかかわらず東電の賠償が支払われたほか、作ったコメを売れば収入も得られた。しかし今年は稲作を自粛すれば賠償は継続し、作付けすれば賠償は打ち切られることになった。

 収入の差を埋めるため、市は主食用米を作付けした農家に10アール当たり2万円、政府備蓄米を作ればさらに1万円の補助を決めた。しかし作付けを自粛した場合の賠償額は主食用米の収入を上回る見通しで、政府備蓄米を作った場合とも大差はない。

 作付けを見送った原町区の農家男性(67)は「除染も進まない状況で労力を考えれば、賠償をもらえるうちはコメは作らない」と心情を明かす。昨年、旧警戒区域に近い原町区の旧太田村産米から食品の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えるセシウムを検出しており、農家男性は「うちのコメから(基準値超の)セシウムが出れば、ほかにも迷惑を掛ける」と複雑な思いを吐露する。

 一方、原発から北に三十数キロの同市鹿島区で村井利次さん(66)は大型連休中に約100アールの水田で田植えをした。「農家はコメを作ってこそ」。4年ぶりの作付けに声も弾むが「もっと原発に近い場所なら作付けしなかった」と本音ものぞく。「除染も進んでいない。収入の差を見ると、作らない人の気持ちも分かる」と理解を示す。

 避難区域外で作付けする農家の戸数は76戸と、昨年の146戸から半減した。市は「賠償金の有無が農家の意欲をそいでしまった可能性がある」と頭を抱える。市は対策を検討するが、補助金や除染など、課題は山積している。

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