【復興公営住宅】 応募で"地域間格差"、バランスを考慮へ

 
【復興公営住宅】 応募で

9月上旬の入居開始に向けて整備が進む飯舘村民向けの復興公営住宅=福島市飯野町

 東京電力福島第1原発事故による避難者の生活再建に向け、早期整備が求められている県の復興公営住宅。県は、11月から来春にかけ順次入居が始まる第1期分の募集を締め切り、16日に抽選して入居者を決める。

 1期分は福島、会津若松、郡山、いわき4市の11団地528戸の入居希望者を募ったが、避難者が特に多いいわき、郡山両市には倍率が5倍に上る団地がある一方、飯舘村の住民に限った福島市の団地は定員割れも生じ、地域間の人気の偏りをどのように縮めるのかが課題として表面化した。

 県は31日まで、募集戸数を下回った福島市などの団地で入居希望者を再募集している。福島市の団地は引き続き、飯舘村の住民に限定したが、再募集でも定員に達しなかった場合は村外の住民にも拡大することを視野に入れる。しかし、県は「避難市町村の意向調査を基に建設戸数を決めている。住民間で不公平感が出ないようできる限り計画で設定した市町村の住民が入居できる対策を取りたい」とする。

 応募の出足が鈍かった要因には、住民への周知不足がある。県は市町村の広報紙に情報を掲載したが、今後は幅広い媒体でPRを強化する。また、東電による損害賠償の動向を見定め、次回以降の応募を考えている住民もいるため、きめ細かな情報発信と地域ごとのバランスを考慮した募集計画の策定が必要となる。

 飯舘村民、賃貸住宅「決断できない」

 復興公営住宅の募集定員割れは、飯舘村民向けの住宅で傾向が顕著に表れている。飯舘村が福島市飯野町に建設している23戸の復興公営住宅では、3割が決まらなかった。

 福島市に造る公営住宅は賃貸形式だ。同市の仮設住宅に避難する自営業佐藤一行さん(61)=飯舘村=は「村では持ち家に住んでいた人が多く、毎月家賃を払う賃貸で暮らそうという人はあまりいない」と話す。村は「復興住宅が借り上げのアパートと環境面で大きく違わなければ、引っ越しするリスクは避けたいのではないか」と分析する。

 生活スペースの問題もある。福島市の借り上げ公営住宅に住む団体職員大内和夫さん(56)は「うちは13人家族。3LDKは狭い。子どもは村に帰らないと言っているし、今は決断できない」と戸惑いの表情を見せる。