望郷の思い胸に"新生活"スタートへ 飯舘の菅野さん一家

 
望郷の思い胸に

仮設住宅で引っ越しの準備をする菅野さん(左)=福島市松川町

 飯舘村が福島市飯野町に建設し、今月に入居が始まる復興公営住宅は、原発事故による避難市町村で住民が新たな生活をスタートする最初のケースとなる。団地内の一戸建て3LDKに家族5人で入居する会社員菅野陽介さん(28)は6日に予定している引っ越しに向けて、同市松川町の仮設住宅で片付け作業に追われている。

 5人で住む仮設住宅での避難生活は約3年が経過した。「最初は狭く感じていた仮設だが、時間がたつにつれて慣れてしまった」。夏は暑く、冬に冷え込んだ仮設住宅の室内。村内の自宅では、なかった住環境だった。2年前に父を病気で亡くし、祖母は84歳になる。「ばあちゃんは知らない土地で避難生活を送った。日中に一人で、ぽつんといるより、村の仲間のいる所で住まわせたかった」。入居を申請したのは「落ち着いた場所で生活してもらいたい」との思いからだった。

 居住制限区域にある村の自宅は雨漏りがひどく、床が抜けていたり、ネズミや野良猫が入り、カビの臭いで生活は困難な状況だ。しかし、「25年住んだ家は、じいちゃんが建てた。思いも強く、あまり壊す気持ちになれない」。菅野さんは望郷の思いを胸に抱きながら、新生活を始めようとしている。

 地域間、人気に偏り

 県の復興公営住宅は福島、郡山、いわき、会津若松の4市を中心に整備が進められているが、4月に始まった11団地、528戸の入居者募集で明らかになったのは、地域間の人気の偏りだ。

 避難住民が多いいわき、郡山両市の住宅への応募で高倍率が目立ち、ほぼ入居者が決まった一方、福島、会津若松両市は入居希望が少ない団地が目立ち、今月1日に再々募集が始まる。